太田直樹のブログ - 日々是好日

テクノロジーが社会を変える

2017年のまとめ

2017年は、僕らが「多分後戻りのできない分岐点*1」にいて「けれどそのことの自覚が難しい」中で「自分なりの問いとアクション」が見えた年だった。MITメディアラボの伊藤穰一さんの年末のブログは、こんな素敵な言葉で締めくくられている(僕の訳です)。

子供と言えば、個人的なことで付け加えたいことがある。5月に私の娘、Kioが生を受けたことだ。彼女の名前は「輝く光」という意味で、彼女にぴったりだと思う。私がやることの全て、もっと言えば、我々がやることの全ては、彼女とそれに続く世代のためだということを、Kioは常に思い出させてくれる。

ときおり私は、「世界をより良くする」ことを望む人々にこう尋ねる:誰のために、どのような時期に?次の四半期、株主のために言う人もいる。7世代後の家族のためだと言う人もいる。自分が永遠に存在するためと言う人も。あなたがこの質問を自分にしていないなら、新年に考えてみてはいかがでしょうか。

子供たちの学びを起点に社会が変わる

沿道から声援を送るところから、何とか伴走までいきたいと思っているのが「教育」だ。20年くらい経つと「教育」という概念は大きく変わっている*2と思うけれど。子供たちの「学び」には本当に可能性があって、そこから周りの大人たちや地域に「化学反応」が起きる。それをまざまざと見た*3。横瀬町の中学校でトップクリエイターが半年間、本気で行ったキャリア教育「横瀬クリエイティビティクラス *4」。未来が見える海士町島前高校のプログラムを全国に広げる「魅力化プラットフォーム*5」。学びの最前線には、僕が好きな「変人」だらけだ。来年は、こういった人たちがイノベーションを起こすコミュニティを立ち上げる予定。

未来の風景を描く

補佐官時代の最後の半年間は「権力の中枢」の間近で仕事をしていた。ずっと感じていたのは、政権の現実への対応能力の高さと、他方で、未来が力強く語られることの少なさ。選挙に左右される政治家や単年予算主義の官僚という、よく言われる理由ではないように思う。未来への投資が削られる国に、未来はない。国家は立ちすくんでいて*6、それほど遠くない未来に世界を動かしているのは国家ではない*7のかもしれない。

ヤフーの安宅さんが言い出しっぺの「風の谷」というプロジェクトが年末に立ち上がった。きっかけは11月のコクリ!キャンプ。ものすごく濃いメンバーが集まっている。来年は、ここから生まれる「風景」を共有したい。

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Copyright: Kaz Ataka

Social in the loopを構想する

Code for Japanを中心とするシビックテックのコミュニティとの繋がり*8が深くなった。行政に対して「お客さん」にならずに、率先して動き、共に作るという文化がとても好きだ。行政や企業を中心とした「IT大国」という夢は破れてしまった*9んだなあと思う反面、立場を超えたイノベーション*10の企てが、このコミュニティから生まれそうだ。特に日本で進むといいと思っているのは、テクノロジーが巨大企業が提供するブラックボックスではなく、社会やコミュニティがしっかり参加して実装される*11世界だ。

Code for Japanを中心に「官民データ法の勝手ガイドラインを作る」プロジェクト*12が年末に立ち上がった。行政の仕組みを書き換えることを、行政も巻き込んで楽しくやっていきましょう。

 身体知や集合知からデザインする

集団に居ることが何よりも苦手なのに、気がつけば、コミュニティの運営に関わっている。コクリ!プロジェクト。セクターや地域を超えた繋がりから、身体知や集合知*13が立ち現れる。30人(増上寺)、70人(海士町)、120人(建長寺)とプログラムを磨き込み、「風の谷」なんかを含めて、奇跡のような出来事が次々と起こった。

来年は、今の研究チームに、デザイン思考やアート思考のフロントランナーが新たに加わり、100年後から見て「ここから歴史が変わった」というような「うねり」が生まれてくることを楽しみにしている。

 

9月から年末にかけて多分20回近く、お疲れさま会を開いてもらった。自分にとってはアウェイな環境で2年7ヶ月仕事をして、それにも関わらず、本当に多様な人たちと仕事以上の関係を持てたことに感謝したい。また、そうして知り合った人を訪ねて、退職後の時間を利用して息子といろんな土地を旅し、再び彼らと酒を酌み交わすことができたことも。

来年は、パブリック、プライペート、ソーシャルをまたがって、3つくらいの仕事をすることになりそうだ。新しく始まるものもあり、心地よい緊張感がある。酒量を控え、身体と心を鍛えて、ただし、適度な余白を持って進んでいきたい。

皆さま、本年も大変お世話になりました。どうか良い年をお迎えください。

*1:こんなマイナーなブログで、2万人以上の方に読んでいただきました。ありがとうございます。僕らは日本の将来の岐路に立っていて、そのことの自覚や議論が難しいことについて - 太田直樹のブログ - 日々是好日 また、都市集中と地方分散が世界的なイシューであることも色々な場で感じます。地方は世界的に厳しい、エコノミスト誌とMITメディアラボの記事 - 太田直樹のブログ - 日々是好日

*2:EdTechの現在地、300年の歴史が変わるか - 太田直樹のブログ - 日々是好日

*3:EdTechのこれから、注目している人たち - 太田直樹のブログ - 日々是好日

*4:後々振り返ると、単なる「キャリア教育」超えた、大きなうねりの発端の一つになるのではと思います。「食うに困るアーティスト」という表現を、過去の風変わりな比喩表現にできないか? - 太田直樹のブログ - 日々是好日

*5:未来の学びが見えるところです。不確実な未来。何をどう学ぶか - 100年変わらなかった学校が変わる? - 太田直樹のブログ - 日々是好日

*6:”会いに行ける官僚”、バズった経産省「若手PJ」とこれから - 太田直樹のブログ - 日々是好日

*7:誰が2027年の世界を動かしているのか - このレポートは必読 - 太田直樹のブログ - 日々是好日

*8:Code for Japanが出来て5年。行政や企業でも、動きのあるところでは徐々に存在感が増しているように思う。CIVIC TECH FORUMに参加して - 太田直樹のブログ - 日々是好日

*9:テクノロジーにおいて「米中2強」という構図がはっきりしたのが2017年だと思います。イノベーションで中国に負ける日、グローカルに本気で賭ける - 太田直樹のブログ - 日々是好日 

ユニコーン企業の8割が米中に集中、日本はどこから変わるのか? - 太田直樹のブログ - 日々是好日

*10:Code for Japan Summit 2017、越境するワクワク感 - 太田直樹のブログ - 日々是好日

*11:CIVIC TECHの最前線が面白くて仕方がない - 太田直樹のブログ - 日々是好日

*12:Fast alone, Far together - 1人だと早く、一緒だと遠くへ - 太田直樹のブログ - 日々是好日

*13:身体知や集合知を体感した1年だった。「目の独裁」から自らを解放する - 太田直樹のブログ - 日々是好日経産省若手PJに参加した「有識者」で際立った存在感を示していたドミニク・チェンさんの、関係性や感覚から生まれる知というテーマも面白い。【ドミニク・チェン】「正しいテクノロジー」だけではもうダメだ