正直に言えば「学習指導要領」について考えたことも、ましてや話をしたことは、これまでの人生でほとんどない。なんだけれども、学習指導要領が大きく変わり、学校も変わり、社会も変わる(かもしれない)ということについて書いてみたい。
「AIによって人間の仕事がなくなるかも」「いま学校で教えていることは、将来使えないんじゃないの」という課題意識から出発して、「不確実な未来を生き抜いて社会に役に立つような知識や力が身につく」ことを、今度の学習指導要領では目指している。
結構、大胆に社会の変化を先取りしていないか。これが第一印象。学習指導要領は、10年に一度しか改訂しない*1ので、2年早かったら、もっと保守的なものになっていたのではないか。
一方で「日本の教育は100年変わらない」ということをよく聞く。そう聞いたとき、何か具体的なイメージが湧くだろうか。
僕の場合は、総務省の仕事で「教育の情報化」という重点施策があり、学校を訪問したり、統計を見たりすると、100年とは言わなくても「昭和から変わっていない*2」と感じる。また、子供二人の教育については、ポジティブ・ネガティブ半々という感じ。
縁があってお手伝いすることになった「財団法人 地域・教育魅力化プラットフォーム」の集まりに出かけてきた。まず、この3分の動画を見てください。
新しい学習指導要領に話を戻すと、理念が「社会に開かれた教育課程」。その心は三つある。ちなみに、全て僕個人の理解です。
・学校のための教育課程ではなく、学校教育を通じて社会を変えていくためのもの。
・大学入試のための資質・能力ではなく、自分の人生を切り拓いていくための資質・能力。
・実施においては、教員だけが教育をするのではなく、地域の資源を活用。
動画を見てもらった方は、「この3点はかなり抽象的だけれど、(動画の)島前高校でやっていることはなんか近いんじゃない」と感じると思う。参加した集まりでも、そんな声を聞いた。
しかし、他方で「それは海士町だからできるのはないか」「岩本さん(動画中のお地蔵さんみたいなひと)が居たからできるのではないか」という声もあった。
そうかもしれない。ただ、各地に「魅力化」のムーブメントは広がっているし、「だから論」を超える方法論もできつつある。
加速するデジタル技術と社会的な影響について、程度の差こそあれ、僕らは漠とした不安を感じている。そんな中でできる「具体的なアクション*3」が、ここにあるように思う。何しろ「社会に開かれた」と謳っている。動画であったように、地域の住民の方や企業に勤めている人が参加する機会が増える。でも「忙しいし、面倒くさそう」かもしれない。
最後にもう一つ、以前このブログでも書いた、友人が手弁当で企画した、埼玉県秩父郡横瀬町での取り組みの動画をご紹介したい。中学生と町の人とクリエイターがチームになって、町の課題を解決していく。私の高校生の息子も一部参加したのですが、ものすごく刺激になっていました。
こういったことが各地に広がると、100年変わらないと言われていた学校が変わって、地域が変わる。そんな映像が見えてきませんか。
*1:ざっくり言うと、学習指導要領というのは、日本の小中高で何を教えるのかを定めていて、それは10年に一度改定され、「詰め込み教育」→「ゆとり教育(1980、狭義では2002〜)」→「脱ゆとり教育(2011〜)」→「次の学習指導要領(2020〜)」という流れ。
*2:統計表一覧 政府統計の総合窓口 GL08020103 この統計の「市区町村別インターネットの状況」を参照。小中学校において、教室で無線LANが使えるのは公称2割、実態は1割以下。また地域差が大変大きい。予算措置は、文部科学省によってなされており、地域の自治体、教育委員会、家庭の関心が低いことがよく分かる。機会があれば、是非声をあげてください。
*3:「とりあえずどこから?」と思った高校生、教育関係者、自治体、企業の方は、ぜひここから。マイプロジェクト・アワード。