太田直樹のブログ - 日々是好日

テクノロジーが社会を変える

誰が2027年の世界を動かしているのか - このレポートは必読

iPhoneが出てから10年が経った。これからの10年はもっと変わる。僕らは、いま、その分岐点に立っていることがとてもよく分かるレポート*1だ。プロジェクトに参加した元同僚のReiruiさんの活躍には敬意を表したい。

議論の中で何度も浮かび上がったテーマは、各ステークホルダーがテクノロジーの進化の速度にどう対応していくか、データの増大とインターネットの普及は現在の社会構造をどう変えていくのか、既存の経済的な不平等を助長するのかそれとも是正するのか、そして規制にまだ実効性があるのか、どうしたら各ステークホルダーが互いを信用して制度や規制を守るのか。我々のシナリオで十分な解はもちろん出ていませんが、それらを念頭にいれつつ読んでいただけると面白いと思います。

(Ri Reiruiさんのブログより)

混乱の末、デジタルを捨てるのか。技術進化についに追いつけない国家に代わって、超国家的なコミュニティが現れるのか。テクノロジーを善きことに活用する国際的な調和が生まれるのか。レポートでは3つのシナリオが描かれる。2018年から2027年までの年表もリアルだ。

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さて、僕らはどんなアクションを起こせるのだろうか。

日本では、PDS (Personal Data Store)を進めることが、6月に閣議決定された成長戦略に盛り込まれている。PDSとは、個人が自分のデータを制御すること。行政や企業にある自分のデータを活用する、移す、消去することを促進するものだ。

EUではGDPR(一般データ保護規則)が2018年5月に施行され、PDSが導入される。日本では、様々な議論を経た末*2、民間のルールとして動き出す。PDSは消費者保護というだけでなく、競争政策でもある。EUでは、対GAFAの規制という捉え方もある。なので、米国ではなかなか受け入れがたい規制になる。

レポートのシナリオ3では、APECのプライバシールールがEUと調和する、という展開が描かれている。日本における取り組みは、この流れを作るものになるかもしれない。

また、ロボット・AIについては、開発原則について、この秋からOECDで議論が始まる。昨年、G7のICT大臣会合で、開発原則の提案をした日本には、海外からは注目が集まっている。もちろん、米国や欧州でも検討が進んでいて、どのような成果が生まれるか、それは実効性があるのか、開発意欲をそがないか*3、など論点は多数ある。

これらは、地味な活動だけれど、重要な局面にきている。

*1:ボッシュ財団が賛助するドイツの独立系シンクタンクによるプロジェクト。メンバーの多様性が素晴らしい。

www.gppi.net

*2:日本では「情報銀行」という呼び方をされていて、「国が個人の情報を管理するのか」という趣旨とは真逆の(延髄反射的な)批判や、よく分からないけど不安という声があり、なかなか難しい施策。欧米と比較すると、データ利用について個人が感じる不安が高いという特徴があり、この夏に発行される情報通信白書で分析がなされている。

www.yomiuri.co.jp

*3:国内での意見の例。"ターミネーターのようなSFで語られる汎用人工知能に対する脅威論が、会議でもそのまま展開されていた(丸山氏)”わけではないんですけどね... 

itpro.nikkeibp.co.jp