太田直樹のブログ - 日々是好日

テクノロジーが社会を変える

”会いに行ける官僚”、バズった経産省「若手PJ」とこれから

「立ちすくむ国家WS*1」に参加してきた。5月18日に、経済産業省でもっとも重要な産業構造審議会の総会で、若手官僚30人が作ったペーパー「不安な個人、立ちすくむ国家〜モデル無き時代をどう前向きに生き抜くか〜」が配布された*2のは異例なことだし、その資料が100万ダウンロードを超えている、というのも異例だろう。

そう、ミリオンセラーだ。最近、とんと聞かなくなった。音楽だとAKBやEXILEレベル。それも特典目当てに何枚も買う人がいるので、そう考えると、ちょっとすごい現象だ。おきまりのパターンだが、ネットで火がつき、マスメディアが追いかけ*3始めている。

 

ここでは、ワークショップの状況の報告をしつつ、インパクトを生むための手がかりを考えてみたい。

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<若手PJメンバーによる背景説明>

次官から「視座をあげろ」という問いかけがあったらしい。それを受けて、メンバーの一人が考えたのは「個人から”不安であること”を聞いたとき、その答えが自分にはない」ということ。そこから「個人に寄り添い、そのニーズを答えるための”あるべき論”」という方向性が出てきた。

割と「自分ごと」「身の丈」で、いいんじゃないか、と僕は思った。ただ、人によっては「天下国家を語る」のが官僚とか、いろいろ意見があるところだろう。

<若手PJメンバーと元同僚の望月さんの対話>

ここでスマートニュースの望月さんが登場。このペーパーがバズるきっかけの一つになった”経産省「次官・若手ペーパー」に対する元同僚からの応答 *4”を、5月20日にブログに投稿。自分が指摘したのは、大きく3点あると口火をきる。

・財政的制約を考えなかったのか

・個人のニーズと財政上の要求が混在していないか

・官と民の関係がちょっと違うのでは

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PJメンバーの答えは、やはり「個人に寄り添う」というあたりが強調されていた。そして、話はバズったあとの反響に及んだ。メンバーに刺さった言葉は

・地方はこうじゃない(特に「人生すごろく」について)

・霞ヶ関にも人間がいたんだ

というもの。また、「個人を中心にして、適度な粒度(細かすぎない)なので、乗っかりやすかったのでは」という感想がでた。

会場からは「会いに行ける官僚*5」というフレーズが飛び出した。なるほど、という感じ。

<分科会>

ここまで45分で、主催した関さんが仕切って、あとは3つのテーマで分科会。熱気があって、軽い酸欠状態のよう。それぞれのテーマの中で、さらに具体的なテーマを出して、グラフィックレコーダーも入って、100人が14のチームに分かれる。1時間強、小グループで議論。アウトプットは、具体的なアクション。それを最後に全体で共有。

僕は「子供への投資」の中で「ITを使った教育」のチームに参加した。アクションの一つを紹介すると「エンジニアのヒーローをつくる」こと。例えば、サッカーには、カズや中田や本田がいる。ITにもヒーロー欲しいよなあ。

最後、関さんのアクションは「7月にまたワークショップをやること」だった。この人の熱量はハンパない。

 

次に、これってバズったけど、インパクトにつながるの、という問いに向き合ってみたい。PJメンバーも、何かアクションにつなげなくては、というプレッシャーをひしひしと感じている。

 

望月さんの問いは「国家ビジョンとして、いくつか大きな軸があって、それによって選択肢があるだろう」ということだと僕は理解している。また、官僚について「天下国家を語る」というイメージや期待もあるだろう。

さて、このワークショップのようなグラスルーツ的なものって、正直どうなんだろうか。

「コレクティブ・インパクト*6」というアプローチがある。これは、課題が複雑化する中で、権力者や天才が変革を起こすのではなく、政府・自治体、ビジネス、大学、NPO、さらには一般市民がアジェンダを共有し、協力してシステムを変えていく必要がある、というものだ。

日本だと、いのさんこと井上英之さん *7が、コレクティブ・インパクトを具現化しようとしている。そういえば、先日来、いのさんとやりとりをしていたんだった。

少し尻すぼみだけれど、結びとして、コレクティブ・インパクトの5つの要件と、若手PJへの現時点の問いを書いておきたい。

1. アジェンダを共有する

2. 測定システムを共有する

3. 互いを強化しあう活動

4. 継続的なコミュニケーション

5. 活動を推進するためのバックボーン組織

 

セクターを超えたチームが、例えば1週間「学びの旅」をするくらいのコミットができるか?それくらいやらないと、アジェンダは共有できないし、3や4につながらない。僕らは忙しすぎるけれど、本当に大事なことならコミットできるのではないか?

海外と比べて弱いのが「測ること」。ソーシャル系では軽視されがちだし、政府系では最近KPIとかPDCAと言われ出したが、それで安心して思考停止していることが多くないか。測定の目的は、セクターや組織を超えて、皆が学びあってゴールに向かうための手がかりになること。3つのテーマでは何が測定できそうか?

「会いに行ける官僚」が、一時バズって、消費されるのではなく、インパクトにつながる未来が見てみたい。

*1:https://medium.com/code-for-japan/0613ws-65542240e911 Code for Japanの関さんが企画。素晴らしい場をありがとうございました!

*2:http://www.meti.go.jp/committee/summary/eic0009/020_haifu.html 産業構造審議会総会(第20回)配布資料

*3:http://www.nikkei.com/article/DGXMZO17560370S7A610C1000000/ 日経新聞6月13日「経産省若手プロジェクト 空回りしないためには」、http://www.asahi.com/articles/ASK6D4GVQK6DULFA01D.html 朝日新聞6月13日「社会保障”現役世代に冷た” 経産省若手、異例の提言」

*4:http://hirokimochizuki.hatenablog.com/entry/response.meti 望月さんの他にもいろいろな人が書いているので、適宜読んでみてください。

*5:AKBの「会いにいけるアイドル」からのアナロジーですね。

*6:http://yokohama.etic.or.jp/archives/1968 コンパクトにまとまっているものを貼っておきます。まだ日本では定着していないように思います。

*7:http://intl-fellow.jp/activities/inoue.html いのさん。なんか顔がしゅっとしている。5年以上前から、このテーマに取り組んでいたんだなあ。