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太田直樹のブログ - 日々是好日

テクノロジーが社会を変える

CIVIC TECH FORUMに参加して

CIVIC TECH FORUMに参加し、冒頭で話をさせていただいた。なんだか明るい気分になったので、8年ぶり*1にブログを再開してみた。

 

最初に「着眼大局着手小局」でありたい、と言った。

その心は、これから20年ほどで、暮らし方や働き方、ひいては社会が大きく変わる。大きな流れは見ておいた方がいいけれども、将来を予想しようとして情報を集めたり、そうしながらあれこれ心配したり、あーだこーだ議論しているよりは、「いま」に集中して行動したいよね。その方が楽しくないですか。そういうことだ。

さらに言えば、テクノロジーの進化のお陰で、小さなチームで大きな流れを作ることができる。今年、ドイツで開かれた国際ICT見本市のCeBITは、日本がパートナー国で、100社以上が参加したが、ソラコムやCerevoといったスタートアップが存在感を示していた。

ただし、テクノロジーの社会実装には、合理性や合法性を超えたところに壁がある。CIVIC TECH FORUMの会場では、ある政令指定都市におけるデジタルサイネージの実証実験の写真を見せた。画像認識技術を使って、サイネージを見た人数・年齢・性別のデータをとっているのだけれど、「何に使われるのか不安」という声で、カメラが作動する3メートルのところに線が引かれ、その両端に「中に入ると撮影される」と書かれた看板が設置されている。これでは、事実上「立ち入り禁止」で、サイネージの利用は全くされていない。

 

トロンの開発者である坂村教授が、こんなことを書いている*2。技術の社会実装は多くの変数が入った方程式を解くことだと。科学は、技術、産業、社会へと実装されていくが、科学は正しいかどうか、技術は役に立つかどうか、産業は儲かるかどうか、社会になると、政治や市民のレベルで感情が入ると。このように変数が増えていく。これが現実。

さらに考えなくてはいけないのは、今日、そういった「感情」がソーシャルメディアで増幅されること。また、トラウマになっている事案もある*3。これらについては、またどこかで書いてみたい。

そうした中、僕が面白いと思う「着手小局」は、都市単位の取組みだ。国内外でいろいろあるけれど、一つ挙げるとすれば会津若松市。人口12万人で、東京から決して近いとは言えないけれど、「日本の1000分の1スケールの実証実験フィールド」という旗印を立て、市と大学*4、企業、住民が連携し、データを蓄積・分析して、エネルギー、観光、行政サービス、医療といった領域で成果を出しつつある。

特筆すべきは、100人単位で雇用が生まれつつあること。しかも給料は極めて高い。地方創生といえば、補助金でいろいろやっていても、つまるところ工場誘致と公共工事しかなかった。この2つ以外にやり様があることが、証明されつつある。

 

マッキンゼーが昨年だしたレポート*5によれば、国よりも都市の方が、技術の社会実装で早く動ける、しかも、市民や企業に近いので、より良いサービスを提供できる。さらに、そうした市長が国境を越えて連携しつつある。また、米国のNIC(国家情報会議)が大統領選ごとに出す長期シナリオ分析*6でも、国の役割が縮小し、都市とNGOが協力して課題に取り組むシナリオを描いている。

なんだか話は大きくなってしまったけれど、「着手小局」が大きなシステム変容を起こしていく。そんな兆しがあちらこちらにある。本当なの?どうしたらそうなるの?そういった質問が浮かんでくると思う。このことについても、またどこかで書いてみたい。

 

*1:昔のブログを読み返して、30代の無茶苦茶な生活ぶりに冷汗

*2:『不完全な時代ー科学と感情の間で』角川書店、2011年

*3:2013年にJRがSuicaの匿名加工情報を第三者に提供したことと、2014年に総務省の実証で大阪駅地下街で画像データを使ったこと

*4:会津大学というICTに特化した大学がある

*5:The power of collective action: Forging a global role for mayors、2016年6月

*6:Global Trends. 最新版は2017年1月に発表されている。タイトルはParadox of Progressという、いま起こっている分断について興味深い分析を行なっている