政治や行政の仕事に不満があれば、自らその仕事を試してみよ。企業のビジネス手法に問題ありと思うなら、自ら解決を試みてみよ。地域社会に課題があると感じたら、自分の家を例に解決してみよ。
『シビックテックイノベーション 行動する市民エンジニアが社会を変える』の冒頭に、福沢諭吉の140年前のメッセージが記されている。
著者の松崎太亮さんは、神戸市役所の行政マンだ。日本のシビックテックは、5年ほど前から動き出した。その前線のひとつ、神戸市のキーマンだ。
ところで「シビックテック」とは、何なのか?
その答えは、海外も含めた具体例が、この本に満載されているので、ぜひ一読いただきたい。シェアリングエコノミー、クラウドファンディング、オープン/ビッグデータ、これらを駆動するという点で、シビックテックは今後存在感を増すだろう。
行政や企業において、未来をつくる仕事をしている方には、ぜひシビックテックのコミュニティと接する*1ことをお勧めしたい。
出所:The 2013 Knight Foundation report “The Emergence of Civic Tech”
僕がシビックテックはいいなあ、と思うのは、そこにセクターを越えて活躍する人材がいるからだ。松崎さんの本でも「組織の壁を越えて働ける越境人材作り」に、一つの章が割かれている。「越境人材」は、パブリックとプライベートセクター両方で、これから貴重な存在になるだろう。
企業で、テレワークや副業が導入される動きが高まっているけれど、うまくシビックテックとつながる*2といいなあ、と思っている。
もう一つ大事だと思うのは、シビックテックが、僕らの将来を分岐させる鍵になるからだ。あと15年もすれば、全ての事象がトラッキングされ、データが収集され、いろんなところでAIが活用される。
当たり前だけれど、テクノロジーに善悪はなく、両方に使われる。そして、その判断はシリコンバレーを中心とした巨大企業が握りつつある。伊藤穰一さんが言うように*3、黒人では顔認証のソフトウェアがうまく作動しない、という「不都合な事実」が今はある。
伊藤さんは、将来、誰がAIを教育するのか、という問いにSocial in the loopという仮説を唱えている。要は専門家だけではなく、社会/コミュニティが参加すべきということ。これは、自動運転の「トロッコ問題」について、MITメディアラボで行われている実証実験*4から、ヒントが見えてくるだろう。
シビックテックのイベントがあれば、ぜひ覗いてみてください。
Code for Japan Summit 2017、越境するワクワク感 - 太田直樹のブログ - 日々是好日
CIVIC TECH FORUMに参加して - 太田直樹のブログ - 日々是好日
*1:まずはCfJにコンタクトするのをお勧めします。Code for Japan
*2:Code for Japanにあるコーポレートフェローシップが良い例。民間人材が自治体を変える!?〜コーポレートフェローシップ報告会①〜 – Code for Japan – Medium
*3:【伊藤穰一】自分は「善人」。そう考えるグーグルに疑問あり
*4:興味がある方には、この記事は参考になると思います。自動運転車のAIに「人間の生死」を教える、大学教授の狙い | FUZE