太田直樹のブログ - 日々是好日

テクノロジーが社会を変える

鎌倉資本主義を考える日(第0回)

「鎌倉資本主義を考える日」に参加した。面白法人カヤックの柳澤さんの声かけで、鎌倉に拠点を構える企業、カヤックの他、パタゴニア、鎌倉投信などの経営者や(この言い方は好きではないけれど)有識者が、建長寺に集まり、半日みっちり議論した。

「資本主義の限界」は、富の格差など、様々な場で語られるわけだけれど、なかなか「自分ごと」にはしにくい。

じゃあ、国が何とかできるかと言えば、例えば富の再配分をとりあげても、必ずしも効率がよいとは言えない*1

僕らは、ため息をついて見ているしかないのだろうか。

柳澤さんの発想は「地域資本主義」というのを発明してしまえば、企業や住民が「自分ごと」として、資本主義の限界を超えて、何か面白いことを出来るのではないか。それをユニークな経営者や住民が多い鎌倉からやってみよう、ということだと思う。

では、「鎌倉資本主義」とは何か。近いうちに発表されるので、ここでは、当日見えてきた補助線について、いくつか取り上げたい。

ひとつは、利益を最優先にしない投資家がでてきたこと。

例えば、鎌倉投信が2010年に立ち上げた「結い2101」が投資するのは、本業を通じて社会課題を解決する「これからの日本に本当に必要とされる会社」「社員とその家族、取引先、地域・自然環境、顧客・消費者、株主を大切にして持続的で豊かな社会を醸成できる会社」だ。ファンドは100億円まで4年かかったが、100億から200億までは2年と、順調に伸びている*2

二つめは、利益ではなく、世界をよくするために競い合うという企業のあり方が、B Corporation*3という形で定義され、静かに広がっていること。

代表例はパタゴニアだ。「アパレル産業はエネルギー産業の次に、環境を破壊している」という課題意識から、業界内にB Corporationを広め、調達や金融まで、その考え方を広げている。

三つめは、ちょっと難しい考えだけれど、経済においてお金の存在が小さくなっていくこと。シェアリング経済やメルカリ経済圏をイメージするとわかりやすいかもしれない。伸びている経済では、欲望の対象がモノからコトに移り、取引は貨幣を使った間接から、信用による直接になっていく。

これらの補助線を引くと、例えば、鎌倉では「住民が株主になって、生活の基本的なもの(衣食住)は配当で満たされる」ということも見えてこないだろうか。

BI(ベーシック・インカム)の発明が、鎌倉で起こるかもしれない。

 

 

*1:2015年に悪化が止まったものの、日本における相対貧困率は30年間ずっと悪くなている。また、給付金を1万円配るのに、事務費が実質3千円くらいかかっている。

*2:運用成績は他の投信に見劣りする。なので、なぜファンが多いのか不思議だ、という声もある。

*3:少し前のものだけれど、グリーンズに掲載されたこの記事はとてもいい。「企業」の在り方を再定義する。NPOでも株式会社でもない、新しい法人格普及に取り組む米国非営利法人「B Lab」インタビュー | greenz.jp | ほしい未来は、つくろう。