太田直樹のブログ - 日々是好日

テクノロジーが社会を変える

ユニコーン企業の8割が米中に集中、日本はどこから変わるのか?

G1 Globalに参加した。いろいろな気づきがあったけれど、ひとつ取り上げるとすれば、Tech Business: Harnessing New Ideas into Sustainable Venturesという分科会だろうか。パネリストの一人、インドを中心にアジアのスタートアップに多数投資している佐藤輝秀さんが、最近発表されたグローバルのユニコーン企業についての調査結果*1に触れていた。

2017年6月末の時点で、ユニコーン企業は世界に252社あって、8割が米国と中国で誕生している。そして、両国は拮抗*2している。3位、4位はぐっと離されてインドと英国だ。日本には1社(メルカリ)しか存在しない。

ユニコーン企業には、様々な業種やビジネスモデルがあるが、テクノロジーを武器に、ユニークな顧客体験を提供しているものが多い。第4次産業革命を先取りしている企業と言ってもいいだろう。

2010年のユニコーン企業の数は10社に満たなかったので、産業革命の進み具合がここから見えてくる。そして、以前も取り上げたが、イノベーションにおける中国の躍進*3が、明確に現れている。

G1 Globalの冒頭で、竹中平蔵さんが「日本は昨年、第4次産業革命に成長戦略の舵を切ったが、これから追いつかなくてはいけない」という話をされていた。そういう意味では、「かなり大きな差がついている」という現実を、この調査は示している。

どのあたりに、可能性があるのだろうか?

佐藤さんは、リクルートの中核事業に対して破壊的な存在だったIndeed(転職業界のグーグル)を同社が買収した例を挙げていた。Indeedは、今やリクルートの市場価値の牽引車になっている。リクルートは、昔は営業(だけ)が強い企業と言われていたけれど、今はすっかりテクノロジー企業になった*4。だから感度がいい。

マクロに日本を見ると、テクノロジー人材が、大企業、しかもベンダー企業に集中しているのが日本だ。結果、日本企業は「ベンダー丸投げ」になりがちで、テクノロジーを使ったイノベーションが起こりにくい。アメリカは逆で、ユーザー企業や中堅中小に人材が散らばっている。国の成長戦略では、この偏在をどう変えるか、という施策が埋め込まれている。

パネリストの竹村詠美さんは、教育について話をしていた。最近は、女子のSTEM教育に力を入れている。これは将来、相当インパクトがあると思う。また、竹村さんがフェローをしているMisletoe(ミスルトウ)が投資しているVIVITAは、子供のアイデアを形にするシードアクセラレーターだけれど、ここで生まれたノウハウが広まると、すごいことが起こると思う。

 日本が変わる兆しは、このあたりにある。そして、テクノロジーを自分の言葉で語ることができないトップがいる企業は、厳しい言い方だけれど、将来は明るくないし、人材も集まらないだろう。

 

*1:世界のユニコーン企業、8割が米と中国に集中 (CNS(China News Service)) - Yahoo!ニュース

*2:米国が106社、中国が98社

*3:イノベーションで中国に負ける日、グローカルに本気で賭ける - 太田直樹のブログ - 日々是好日 中国のユニコーン企業については、VCが過剰にあって、新興企業が過大評価されているという意見もあるけれど、それを割り引いても、イノベーションの勢いは明確だろう。

*4:以前、CTOの米谷さんに話を聞いたけれど、リクルートがテクノロジー企業になる過程は、とても示唆深い。また、リクルートテクノロジーのトップが、次世代経営者の北村さんというあたりも「やるなあ」と思う。