太田直樹のブログ - 日々是好日

テクノロジーが社会を変える

奇跡のような場で起こりつつある、予想だにしなかった未来

「未来が暗い」と言われ始めたのは、1968年に開かれたローマクラブの会合からだと思う。それは僕が生まれた翌年で、そこから半世紀、未来はだんだんと暗くなっている。

「仕方ないし」という諦めが日本の若い世代ではとても強い*1、と言われる。シルバー民主主義が蔓延して、社会やシステムがガチガチに固定されている。でも、経産省若手ペーパーがバズった*2ことを見ると、変化を求めるエネルギーが溜まっているのかもしれない。

そんな中、100年後に「歴史が変わった」と言われるような社会実験を次々と起こそうとしているコミュニティがある。僕は1年前くらいから運営側に入り、個人のプロボノとして活動している。コクリ!プロジェクトについて、そろそろこのブログでも書いてみたい。

 

モデルにしたものの一つに、サスティナブル・フード・ラボ(SFL)がある。これは、企業、行政、農民などが一緒になって持続可能な食糧システムを作っていこうというプロジェクト。参加者が南米の小規模農家を一緒に訪れ、それも単なる視察ではなく、深い対話を行う「ラーニング・ジャーニー」や、荒野の中で1人で48時間を過ごし、深く自分や自然とつながる「ソロ」といった、新しい手法を取り入れている*3。グアテマラなど地域を大きく変えるマルチセクターの連携や、ダボス会議への提案など、大きなインパクトを起こしている。

首長や経営者が、訳のわからないまま即興劇などをやらされている

日本では、そこまでやるのは無理だと思われていたのだけれど、昨年の秋から「コクリ!2.0」として、試行錯誤を重ねてきた。その学びをコミュニティー全体と共有し、次に踏み出す「キャンプ」を、先日、鎌倉の建長寺で行った。

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海士町、小布施町、西粟倉村、南小国町といった小さいながらも尖った地域や、会津若松市、京都市、神戸市、塩尻市、渋谷区といった大きな社会実験を行なっている地域の実践者(首長から若手まで)がいる。

また、ETICの宮城さん、Code for Japanの関さんや藤井さん、ヤフーの安宅さん、カヤックの柳澤さん、青山社中の朝比奈さん、財務省の片岡さんなど、各セクターのフロントランナーが、垣根を超えた信頼関係を築いている。

 

歴史の転換点を生み出すための方法論の研究も行なっている。特徴は、分断を超えて再びつながること、複雑なものを複雑なままとらえること、など。一見すると「かなり怪しい」ことをやっている。「体の声を聴こう」とか。この分野の日本を代表するプロフェッショナルが、コミュニティーに参加して、かなり振り切ったワーク*4を実施している。

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Photo by Kenichi Aikawa

”見えないもの”や”きれいごと”が、社会や経済でやがてリアルになる

このコミュニティーを始めたのは、三田愛(さんだあい)さんだ。いつもスゴイなあと思うのは「一人一人が本領を発揮すれば、社会はもっと良くなる」という確信とそのために必要な人を巻き込む力だ。僕には、それが「祈り」のようなものに見える。

7年前の黒川温泉などの地域単位の活動から始めて、3年前に全国規模のコミュニティーになり、この1年で新たなステージへと進んできた。

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Photo by Kenichi Aikawa

そんなコクリ!について、宮城さんは「説明できない(大事な)ものに正面から向き合っている稀有な存在」*5と言ってくれている。また、早稲田ビジネススクールの入山さんは「企業ガバナンスとよい世界をつくることが同期する時代がやってくる」*6という見立てを話してくれている。

このブログでは、「本当に大事な問い」と「アクション」を念頭に書いているつもりだけれど、それを行う場として、コクリ!プロジェクトも今後少しずつオープンに*7なっていくので、随時お知らせします。

*1:数字だけ見ると日本は本当に悲惨だ。4割が「未来に希望がない」、そして4割が「死ぬまで働き続ける」と答えている。若者の憂うつ、不安胸に将来負担に身構える-日本のミレニアル世代 - Bloomberg

*2:”会いに行ける官僚”、バズった経産省「若手PJ」とこれから - 太田直樹のブログ - 日々是好日

*3:枝廣淳子さんがコンパクトにまとめた記事サスティナブル・フード・ラボ(sustainable food lab)|イーズ 未来共創フォーラム

*4:コクリ!のウェブサイトにいくつか記事がある。また、最近広く知られるようになったものに「マインドフルネス」や、ダイヤモンドハーバードビジネスの連載「リーダーは『描く』」で話題になったEGAKUなどがある。

*5:コクリ!の深い話(6)気づいたら「コクリ!が当たり前」の社会になっているのでは ●宮城治男さん | コクリ!プロジェクト

*6:コクリ!の深い話(7)コクリ!の場は、内省して、自分なりのビジョンの軸を見出す場としても貴重●入山章栄さん(前編) | コクリ!プロジェクト

*7:今まで、少人数・完全招待制の研究コミュニティーとして活動してきたので、「参加したい」という声にはなかなか応えられませんでした。これから、リアルな場に参加しなくても実行できるプログラムやメディアの強化などを進めていきます。