東京都から全国に広がった新型コロナウイルス対策サイトなどで、今年はシビックテックが注目され、コミュニティや活動の幅がぐんと広がった年になりました。僕もCode for Japanの理事として、さまざまな学びがありました。
シビックテックは、この先どのように発展していくのでしょうか。
以下のリサーチは、僕が代表を務めるNew Storiesの学生インターン、森田彩恵さんによるものです(感謝!&卒業おめでとうございます)。
シビックテックを育む生態系とは:米国の分析
2013年に米ナイツ財団が、大変興味深いレポートThe Emergence of Civic Tech: Investments in a Growing Fieldを出しました。シビックテック領域で活動している団体の活動の関係性を可視化し、どこにどのような資金が流れているかを分析したものです。
それによると、シビックテックの団体は、Open GovernmentとCommunity Actionという二つのテーマで活動していることが見えてきました。そして、11のクラスターが新しいアイデアのハブとして、シビックテックのイノベーションを牽引しています。
この11のハブを中心に、2011年1月から13年3月までの間に、209のプロジェクトが実施され、うち102のプロジェクトに、USD431Mが投資されています。一つのプロジェクトあたりの投資は、単純平均でUSD4.2Mです。
その後、米国がどうなったかと言えば、シビックテックを支援していた民主党政権から共和党政権に変わって、やや勢いがなくなったように見えます。
日本の生態系のいま
日本では、Code for Japanが2013年に設立されました。現在の生態系を見ると、Data Access & TransparencyやCommunity Organizingが発展しています。
Open Governmentの領域では、データを活用して、意思決定をする、行動を起こす、投票をするといった領域はこれからです。PoliPoliやissuesなど最近生まれた団体も多く、勢いを感じます。
Community Actionでは、 暮らしに近い領域に発展余地があります。米国のNeighborhood ForumsにあるNextdoorは、地域密着ソーシャルメディアですが、ユニコーン企業に成長しています。また、Peer-to-Peer SharingのAct of Sharingは地域密着で互助を促進しています。
ナイツ財団のレポートで、Information Crowdsourcingに分類されていたWazeは、コミュニティ主導型で地域の情報を共有するサービスですが、Googleに10億ドルで買収され、Googleマップに組み込まれました。
日本のシビックテックのこれから
Open Governmentは、日本では重要な領域です。ここは米国でも収益化は難しく、よりよい社会のために、寄付や投資がなされています。日本では、最近、熱量のある人材が集まってきているので、これからの発展が期待されます。
また、公衆の意思決定という点では、台湾のGov0や欧州のバルセロナ等の取組みが、日本ではどのような可能性があるのかも、今後動きがあるでしょう。
Community Actionの領域では、行政や住民が対価を支払うサービスの伸び代がありそうです。ただし、ここは「公共サービス=行政サービス」「公共サービス=タダ」という意識が、行政や住民の中で変わらないと、可能性が見えてきません。
地域をよく見ると、兆しはあります。そうした取組みには、補助金だけではなく、しっかりしたモニタリングのある助成金や、場合によっては投資が有効です。日本財団やトヨタモビリティ基金などでは、こうした課題意識が高まり、ハンズオンの助成や投資が始まっています。地域の金融機関でも、温度差はかなり大きいのですが、動きがあります。