太田直樹のブログ - 日々是好日

テクノロジーが社会を変える

関係人口から拓ける地域の未来

関係人口について、移住先ランキングで常に上位にあって、行政の取り組みも活発な長野県の自治体の方々とお話をさせていただきました*1。僕は地方創生の専門家でもなく、現場で実務をやっているわけでもありません。専門はITです。ただ、この5年間、様々な地域に足を運び、今はいくつかの地域で未来を創るプロジェクトを行っていて、そこで考えたこと、体験したことに基づいてお話させていただきました。

<セッションで使ったスライドです>*少しフォントが変です。

Nagano pref newstories_12sep2020

関係人口っていったい何だ?

関係人口を知っているのは、40人学級だと1人くらいです。まだまだマニアックな言葉です。ちなみに、このワークショップに参加した人では、「推進している」人が3割、「説明できる」人が1割強、残りは「聞いたことがある」でした。

共有したいのは、「関係人口」には30年くらいの流れがある*2ことです。名前は「信託住民」や「第二町民」などいろいろでした。そして、潮流は強くなってきています。4年前に指出さんが「名付けた」ことで、そのエネルギーが焦点を結ぶようになりました。

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国交省の調査によると「直接寄与型」という、事業創出や地域づくりプロジェクトに関わる人が、三大都市圏の3%、140万人と推定されています。えー、そんなにいるの?という感じですが、これもクラスに1人、学年に数名くらいです。そう考えると、違和感はないかもしれません。

昨年には、第二期の「まち・ひと・しごと総合戦略」を中心に政策になりました。ただ、「移住者」という数を追うと関係人口の可能性を損なう懸念があります。一方で、関係人口そのものを正面から考えて、取り組もうとすると、定義もあいまいで、説明も難しく、もやもやします。

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提案1:チャレンジを増やす

ここは、僕がことあるごとにお勧めしている筧祐介さんの『持続可能な地域のつくり方』に基づいています。ポイントは、地域をまるっと変容させる4つの取り組みの一つ「チャレンジ」を増やすときに、関係人口はとても重要になってくる、ということです。

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小さな風が吹き続ける。関係人口による熱が対流を生み、風が起こる。そのためにできることの選択肢は、広がっています。

・中間支援組織

・リビングラボ

・新しいライフスタイル事業

など。

提案2:高校の魅力化

これは僕がこの5年近く伴走している「地域・教育魅力化プラットフォーム」の経験に基づいています。詳しいことは、関連するブログを読んでほしいのですが、高校の魅力化は、15歳が数十名単位で地方やってきて社会増につながるだけでなく、地域から18歳や22歳で若者が出て行ったあと、その地域に将来関わりをもつことにつながる取り組みになります。

kozatori7.hatenablog.com

何より、大崎海星高校の例で紹介しているように、地域全体がまるっと変容していきます。f:id:kozatori7:20201014151553p:plain

 

長野県の自治体の方々のその他の声

関係人口は手段ですか?目的ですか?(45名中11名のいいね)

どちらかと聞かれると手段なのですが、じゃあ何が目的と聞かれると説明が難しいのですよね。チャレンジを増やすことを目的にする(これも定義は簡単ではありません)が僕の提案です。

従来の行政(成果・実績・数字)と相性が悪いように感じる。そこをどう突破していくか。(役所の中で)どういう部署、職員が取り組むとよいのか?(7名)

「大交流課」などの担当部署を作る地域が増えてきましたが、活動は様々です。大きな理由は、関係をつくる”よりしろ”は地域によって様々だからです。筧さんの本の「チャレンジ」の章でも、地域外の人のニーズや関心を探るより、地域のことを深く知ることが大切とあります。僕もそう思います。

チャレンジを受け入れる施設は作ったが、古い地域のため年寄りの発言力が強く、足を引っ張ることにもなりかねない。地域の人たちの理解を得る方法は?(6名)

これはよく聞きますし、僕も古い村の出身なので分かります。ここでは詳しく書きませんが、鍵は「死生観」、死についての対話だと思っています。特に、日本の高度成長期を生き、富も権力も持っている団塊の世代の方々の「死んだら終わり」という死生観(なので、世代交代が起こらない)がどう変わるか。そこから次の世代も学ぶことがあると思います。

ソーシャルキャピタルの視点が関係人口を測る上で効果がありそう。関係人口と社会関係資本の共通点などで見えてきたことはありますか?(最後の質問)

エビデンスで使えるものは僕は知らないのですが、筧さんのアプローチにも「コミュニティ」があって、ソーシャルキャピタルは密接に関係すると思います。