太田直樹のブログ - 日々是好日

テクノロジーが社会を変える

地方テレビ局の未来

放送と通信の融合は2020年に完了

2016年がスマホにおける動画元年とNewsPicksで元旦に記事を書いたのだけれど、以来、着実にネットから放送への侵攻は進んでいる。YouTubeのアプリ利用者が3600万人というのは無料なのでまあいいとして、有料動画アプリが2017年11月時点で570万人になった。トップはアマゾンプライムの300万人で、急増しているNetflixは70万人*1

AbemaTVは2018年6月時点で3100万人がダウンロードしていて、月平均利用者(MAU)は1000万人を超えている。広告モデルの場合は「月」の数字ではだめで、毎週、毎日のユーザーが重要。週平均利用者(WAU)の目標1000万人に対しても着実に近づいている。

放送側も、そろりそろりとネットに入っている。民放が共同で仕掛けているTVerは、2018年6月時点で、1300万人がダウンロードし、MAUは600万になった。WAUは公表されていない。

NHKの同時再送信への本格参入が仕上げとなって、2020年ごろには放送と通信の融合は完了する。

地方局はいらなくなる?

それは、県域免許に守られていたローカル局を、根底から揺さぶる。なぜなら、キー局から配信される番組と広告料がローカル局を支えているから。ローカル局が制作している番組の比率は、全体の1割ほどしかない。配信のしくみとしては、radikoのように地域を超えた配信に一定の制限をかけるだろう。だが、崩れるのは時間の問題だ。 

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実は地方局2.0がある

何かが起こっている。そう感じたのは、一部ではあるが、優秀な工学部博士課程の人材が地方局に就職している話を知ったときだ。研究室の友人がGoogleなどに行ったのに、「サービス開発やログ解析を好きにやれるから」というのが入社の理由。キー局の就職人気度は2010年代に急落しており、特に技術系の獲得は厳しくなっている。地方局に何が起こっているのだろうか。

どうやら「地方局2.0」とでも呼ぶべき、新たなモデルが現れつつある。まず、地方局1.0から確認すると、売上/利益は広告が主体だ。しかもキー局からの「ネットワーク費」が支えになっている。したがって、コンテンツはキー局制作のものが中心になる。視聴者は広告を見る人で、企業は視聴者へのリーチを重視するという前提だ。人材は営業が中心となる。

地方局2.0はどうか。広告外の売上が1割以上、利益では4割以上となっている。ローカル制作の番組が2割以上あって、地域の情報への視聴者のニーズは高く、Dボタンやハイブリッド・キャストを利用することが習慣化しつつある。企業は、地方局のコンテンツ制作力を頼りに、海外への共同プロモーションを期待している。こうした新しいチャレンジに対して、全国から人材が集まってくる。

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地域局2.0なんて言ってもそんなニーズはホントにあるの?

東京ではそんな声が聞こえる。それはよく分かる。いま言えるのは、上のような「景色」がいくつかの地域で見えることだ。「東京にいると見えないですよね」と、ある地方局のトップから聞いた言葉だ。これが本物かどうかは、実際に地域に身を置いて感じてもらうしかない。ただ、そのあたりを鋭く感じているのは就活生だと思う。

地域メディアの意義

さて、地方局は全国に110社あるが、どの程度が2.0にバージョンアップできるだろうか。それによって、その地域の未来は大きく変わるだろう。

地方局2.0は、観光におけるインバウンド増加に大きな貢献をしている。代表例は、台湾から北海道に観光客が押し寄せるきっかけとなった北海道テレビのLOVE HOKKAIDOだ。次のステップとしては、地域の中堅企業の海外進出を後押しするだろう。

また、米国や英国で起こったことを見ると、地域メディアが衰退する地域では、都市との分断が進み、ポピュリズムが拡大する懸念がある。今年2月、英国のメイ首相は次のようなスピーチをしている。

The decline of local journalism is a threat to democracy and is fueling the rise in fake news