太田直樹のブログ - 日々是好日

テクノロジーが社会を変える

GRサミットの幕開け|変な人集まれ!

GRサミットが誕生した。サミットのテーマは「地域課題解決にフォーカスした良質で戦略的な官民連携」となっている*1。セッションに登壇し、懇親会で40名ほどの方とお話させていただいて(名刺を切らしてしまってすみません)、感じたことや考えたこと。

変人の集まり

まず感じたのは「この真面目なテーマで、随分と変な人(失礼)が集まってきたなあ」ということ。お話を聴くと、みなさん、実にいろんなことをやっている。「地方創生」や「官民連携」は決して魅力的なテーマではない。「お勉強好き」や「意識高い系」「マウンティング系」がいい具合にフィルターされて、変わった人が残ったという印象。

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変人が集まったのは、ゆーてぃこと吉田さんの人徳か

ルールメイキングからディールメイキングへ

マカイラの藤井さんから、「GR(ガバメント・リレーション)で思い浮かぶのは、大企業や業界団体による政府へのロビーイングだが、GRサミットはピボットする」という話があった。背景として、地域の官民連携は3つのうねりに動かされているという。

  • 社会課題解決型イノベーションのテストベッド
  • サービスの地方展開のための入り口
  • CSR(あるいはCSV)活動の現場

よって、伝統的なロビーイングが「ルールメイキング」なのに対して、地方での官民連携は「ディールメイキング」の色が濃くなるのではないか、という仮説が出された。

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現場感にあふれた熱量の高いトーク

これには、登壇者の一人、アソビューの山野さんが特にうなずいていたのだけれど、観光、交通、福祉、医療、教育など、様々な領域で、チャレンジが増えていくように思う。ディールの結果として、新たな事業や企業が生まれていくだろう。

地方へのばらまきは終わるか

2014年からの「地方創生」においてずっと中枢にいる内閣官房の村上さんの「ばらまくな、積み上げろ、評価は厳しく」は、まだ受け入れられていない地方は多数あるけれど、地方創生を駆動する力学を明らかにしている。

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村上さんだけでなく、熊谷さん、菅原さんも本音で話をしていて会場から多くの質問がでた

別の言葉で言えば、あれもこれもでもなく、あれかこれかという「選択」であり、これをやったからこんどはあれではなく「集中」であり、評価が悪いところは「淘汰」されていく、ということだろう(僕個人の解釈)。

この力は、ゆっくりとエネルギーを溜めながら働いている。いつ、どのような形で顕在化するだろうか。過疎法の改正か、地方債の格差か。

イノベーションが地方の課題を解決するか

官民連携における、イノベーションのテストベッドとしての可能性は、この2年間で実感している。会津若松市や福山市では、未来のくらしや未来の学びが、手触り感をもって現れつつある。他にも、つくば市や新富町や横瀬町など、さまざまな地域でイノベーションが起こっている。

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会場を置いてけぼりにしたセッション

それらが、地方創生という文脈で、全国的に課題を解決していくのか、と聞かれると、正直に言えばよく分からない。

地方に対する「都市」は、高い生産性と魅力度を原動力にして、その成長には果てがない。そうしたブレードランナー的な未来に対する代替案を創りたいというビジョンを持つ「風の谷を創る*2」という取り組みを安宅さん等の濃いメンバーとやっているのだけれど、活動期間を100年以上と見積もっている(次の世代にバトンを渡していく)。

ただ、10年単位で「オセロの隅をひっくり返す」ようなイノベーションがいくつか生まれる可能性も感じている。例えば、海士町における学びのイノベーション。これは100年に一度という教育改革の震源地となっている。新富町の農業のイノベーションも、別のオセロの隅になるかもしれない。

オセロの隅をつくるには

最後に、地方というフィールドでイノベーションを起こしたい人にメッセージを。これはGRサミットの活動ではなく、コクリ!プロジェクト*3という取り組みについての話。ちなみに、今日、改めて思ったのだけれど、GRサミットの発起人の吉田さんや多くの登壇者(朝比奈さん、関さん、藤沢さん、宮城さん)、事例(塩尻市の山田さん、新富町の齋藤さん)そして参加者には、コクリ!コミュニティのメンバーがたくさんいた。

コクリ!プロジェクトは、「予想だにしなかった未来をつくる」プロセスを研究してきた。その智慧や経験を来年から共有していく準備をしている。

年内には、『ティール組織』や『学習する組織』など、コクリ!が学んだ智慧の多くを日本で出版している英治出版のBASEという場所で「案内所」をオープンする。これを僕なりのGRサミットへの応答としたい。変な人をお待ちしている。

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*1:プレスリリースより:2008年のリーマンショック、2011年に始まった人口減少、同年の東日本大震災などを機に、資本主義の高度化、少子化・高齢化・多死化、自然災害の多発化等、具体的な地域課題が顕在化しています。ところが、ほとんどの自治体は財政難と職員不足に直面し、地方行政の知見のみに頼る姿勢では対処や解決が難しいケースが増えているのが現状です。
しかしその一方で、テクノロジーの発展に伴う新サービスやソリューションが、そうした地域課題解決の糸口になりつつあり、またその活動が民間企業におけるビジネスシーズやニーズに育つ兆しも見え始めています。

GR(Government Relations:ガバメント・リレーションズ)とは、「地域課題解決にフォーカスした良質で戦略的な官民連携」を意味し、〈行政〉と〈民間〉の間を〈課題解決〉という目的でつなぐ役割を担っています。
このたび開催する「日本GRサミット」は、こうした地域課題が山積する社会背景を踏まえ、“GRを「広げる・学べる・つながれる」機会の創出”を目的に、国内で初めて開催するものです。

今回は、行政の現場を理解し、民間のビジネス環境を把握しながら課題解決のコーディネートにあたるプレーヤーを登壇者に招聘し、具体的なメソッドを学ぶとともに、参加者の方々が多くのステークホルダーとのネットワーキングを積極的に構築できる機会を提供いたします。

*2:発起人の安宅さんのブログ。年内には社団法人化し、活動を開いていく。「風の谷」という希望 - ニューロサイエンスとマーケティングの間 - Between Neuroscience and Marketing

*3:これまでは招待制のコミュニティだったが、年内に法人化し、来年から活動を開いていく。cocre.jalan.net