太田直樹のブログ - 日々是好日

テクノロジーが社会を変える

予想だにしなかった光景を会津で見た

ハッカソンや企業のオープンラボは楽しい。だけれども、感動するまではいかない。会津で行なった3日間のプロトタイピング合宿は、予想をはるかに超えたものになった。最終日のデモを見ていて、熱いものが込み上げてきた。生み出されたものは、年末くらいには、何らかの形で公開されると思うのだれど、一体、会津で何が起こったのだろうか。

合宿の概要

テーマは「未来の暮らし」*1。テクノロジーが効率化だけではなく、ゆたかさをもたらす。そのことを体感できるようなプロトタイプをチームでつくる。パナソニックからは、住宅、家電などのデザイナーやエンジニア、マーケターなど25名、会津からは会津大の学生(起業家やハッカソン優勝者)、会津発スタートアップ、スマートシティ計画を推進する行政職員やアクセンチュアのエンジニア(会津大卒)、国際芸術村のディレクター、地元の伝統企業のデザイナーなど20名が参加した。

感じる熱量

今回のアドバイザーの一人、会津大学准教授の藤井さんは、合宿終了後の翌日、CEATECの会場(幕張メッセ)にいた。そこに、合宿参加者の1人がプロトタイプの改良版を「ぜひ見せたい」とわざわざ持ってきた。藤井さんの傍に、3日間の合宿を共にした会津大の学生(VRで起業中)がいたからだ。このチームは、住宅デザイナー、家電の技術者、VRの学生エンジニアがチームを組み、お互いのスキルやアイデアが、素敵な化学反応を起こしながら制作をしていた。

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住宅デザイナーX家電開発者X学生VRエンジニアの化学反応!

また、別のチームでは、日本で有数の仏具メーカー、アルテマイスターのデザイナーと事業開発者、パナソニックの技術者がチームを組んで、先祖に祈りをささげる新たなかたちをプロトタイプした。アルテマイスターは「仏壇や仏具といったモノより、祈りというコトを暮らしの中に届けたい」という異色の経営者が率いる、創業100年以上の会社だ。

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未来の祈りのかたちをつくる

自らもIT企業を立ち上げたことがある、会津若松市の室井市長は、合宿開始の前夜「すごい化学反応が起こることを期待している」とお話されていたが、本当にその通りになった。

熱を構造に変える

化学反応や熱を、意味のある構造に落とし込んでいくために、今回は、ドミニク・チェンさんと太刀川英輔さんに、アドバイザーとしてどっぷり入ってもらった。グッドデザイン賞の審査員でもある二人が、プロトタイプに取り組むチームの中にはいって、汗をかいている。

ドミニクさんは、ウェルビーイングという、デジタル技術が社会にマイナスになる、という認識が広がる中で注目されている分野で、ユニークな研究や事業を行なっている。この合宿中では、参加者が単なる知識の取得ではなく、ワークを通じてウェルビーイングの多様な因子を「体感」しながら、その感覚を各グループのアイデアに結晶化させていった。

英輔さんは、この夏、ダイヤモンド・ハーバードビジネスレビューに掲載された論文が話題になった「進化思考」をチームに叩き込んだ。この手法の説明はここでは省略するが、例えば「商い」がどのように変わってきたかという進化系統樹を書くことによって、商いにイノベーションが起こるときの本質的な「願い」が見えてくる。それを何度もアイデアにぶつけることで「強度」がぐんぐん増していく。例えば「無人化」は、確かに物珍しくて効率的かもしれないが、それほど強度が強くないことが分かる。

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藤井xチェンx太刀川、この3氏の化学反応も楽しかった

これからがもっと楽しいはず

パナソニックの参加者からは「半年間事業開発をやってきたのをこの3日で超えた」とか「この会社に入ってよかった」などの声があった。他方で、そこまでのめり込めなかったり、自分のスキルを発揮できない参加者もいた。

ただ、参加者全員にとって「楽しいのはこれから」ではないだろうか。未来をつくる方程式は「願い」x「技術」x「デザイン」だ*2。今回は「ウェルビーイング」x「データ」x「進化思考」を核とした。

未来はつくることができる、そして計画ではなくて実際につくる中で、インパクトのあるアイデアが現れてくる*3。そのことを、参加者はリアルに感じたと思う。どんどんやっていけば、きっとすごいことが起こるだろうし、「合宿は楽しかったね」で終わってはもったいない。

*1:合宿の詳細はこちらNewstories_news_14Sep2018.pdf - Google ドライブ

*2:提唱者は、ヤフーCSOで慶應義塾大学SFC教授の安宅さん

*3:入山章栄さんの『センスメイキング理論「未来はつくり出せる」は、けっして妄信ではない』ハーバードビジネスレビュー、も参考になる