この文章を読んでいただいているあなたにオススメしたいのは、Code for JapanのFacebookかTwitterをフォローして、次のサミットに参加することだ。社会を良くすることについて、ギークだけでなく、自治体職員や官僚や研究者や学生や経営者や議員やデザイナーが、フラットに一人称で話をしている。
Civic Tech(シビックテック)とは、シビック(市民)とテクノロジーをかけあわせた造語。市民自身が、テクノロジーを活用して、行政サービスの問題や社会課題を解決する取り組み。企業の参加も広がってきた。
新潟で開催されたCode for Japan Summit 2018で、印象に残ったことをまとめてみた。
デジガバはどこへ行くのか
次の臨時国会にデジタルファースト法が提出されると言われているけれど、デジタル・ガバメント(電子政府)については、正直なところ期待はあまり高くないと思う。
個人的な体験を思い起こしても、毎年のeTaxは良い体験とはとても言えないし、今年やったオンラインの法人登記は「これは何かの修行なのか」というほど苦しかった。先日、つくば市でブロックチェーンを使った投票システムのデモを体験したときは、マイナンバーカードの6桁以上のパスワードを覚えている人はほとんどいないという有様。
そのような中で、最近話題になったのが、経済産業省のデジタルトランスフォーメーション室(DX室)だ。民間から2名の採用に、600名以上の応募があった*1。
このDX室が全員新潟に来て、本音の議論をするような関係がCode for Japanのなかで築かれていることに、素直に感動した*2。議論の内容はオフレコなので書けないけれど、トランスフォーメーションに対する壁の厚さと、それでも一穴を穿つ試みが進んでいることに希望を感じた。
もし霞ヶ関のみなさんがこれを読んでいたら、「また経産省が変なことをやってる」と思わずに、機会があれば(こっそりでもいいので)サポートしてほしい。
デザインの力を再認識
今回のサミットのテーマはデザインだった。メインスピーカーの1人として、太刀川英輔さんが登場。僕は多分、彼の「進化思考*3」を最も多く聞いていると自負しているが、改めてデザインの可能性を感じた。
デザインの定義は「形を通じて、関係性を良くすること」。したがって、デザインには「関係を理解すること」と「形をつくること」が必要になる。「進化思考」は「関係性」と「変異」を回していく。
進化させる対象の関係性について、解剖や系統樹などのアプローチで、意味をひもといていく。そして、融合や擬態などで形の選択肢を増やしていく。そして関係性で、スクリーニングをかける。これを繰り返す。
最後の「関係性は愛で、変異は祈りだ」というのが心に残った。
見ているより、やりませんか
データアカデミー*4については、まるで「宣教師」のように全国を飛び回って布教をしている市川さんから、表と裏の話があった。
このデータアカデミーについて「どうせ」とか「でも」とか言うのは簡単だ。少し前に全国的な活動となったチャレンジ・オープン・ガバメント(COG)も同様。行政は、データをオープンにするところまでは国からも言われているのでやるけれども、活用して何かをすることまではやらないし、やりたくない。そんな声もいくつか聞いた。
そんなことは百も承知で、かつ、すごく準備が大変なデータアカデミーに関わる人たちの声が聞けた貴重な時間だった。遠くから見ているより、やった方が楽しそうだ。
やっぱり会津推し
会津から参加していたデザイニウムの前田さんの話が心に残った。
地域通貨について「流通量(速度または回数)と流れが見えることが重要」というのは、とても面白い。「円」で出来ることを地域通貨で代替するのは意味がなくて、これから重要になる、さまざまな関係資本が豊かになるような取り組みをやっている。
そこに電力会社など、暮らしに近い企業が関心を持って、共に歩んでいるのもいい。会津電力は、地域における価値の交換を豊かにすることを経営の主軸に据えている。
やはり会津は面白い*5。
*1:エンジニアが殺到!経産省が極秘にはじめた「電子政府計画」の本気度(佃 均) | 現代ビジネス | 講談社(1/3)
*2:電子行政は、いくつかの基礎自治体の方が国よりよほど進んでいるので、その最前線がわかるコミュニティにCX室がつながっているのは良いことだと思う。
*3:生物進化を参考にして、アイデアを「かたち」にしよう! ――「進化思考」入門 | コクリ!プロジェクト