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日々是好日

テクノロジーが社会を変える

佐治敬三に乾杯


サントリー佐治敬三氏の評伝です。ウィスキーを飲みながら、週末夢中になって読みました。まず思ったのは、自分の基軸を持つことは大事やなあということ。敬三の数々の偉業はその結果であって、本書でも語られているようにたくさんの失敗もやらかしているのです。

例えば、「利益三分主義」。創業者である父、信冶郎は浄土真宗の熱心な信者でした。敬三はその精神を色濃く受け継いでいます。また「真善美」という考え方。これは高校時代に読んだ河合栄次郎の影響ですが、経営者になってから「美感遊創」という考え方に昇華されます。そして大学時代、大阪大学理学部の小竹教授から叩き込まれた「エトバス・ノイエス(何か新しいことはあるか)」という日々革新の精神。さらには、卒業後の海軍士官として身につけたリーダーとしての行動規範。

サントリーが日本の広告を創ってきた歴史も、敬三の価値観や行動原理から見ると深く染み入ってきます。開高健山口瞳の発掘。「ほんきげんよう遊びなはれ」という中で宣伝部が世に送り出したのは、酒を通じて生活や文化を変えていこうというメッセージでした。公共広告機構が敬三の設立によるものだと初めて知りました。今はインターネットに対して守勢一方の広告業界ですが、激動の昭和の時代に生活や社会に対して、広告が持っていた存在感の大きさはどうでしょう。

佐治敬三氏は世紀の変わり目、1999年文化の日に亡くなりました。敬三は多くのものを日本に残しましたが、21世紀は彼が思い描いていたように力強く歩んでいるでしょうか。劇場化する政治、格差社会、倫理が破錠している企業など、多くの課題が山積しています。

佐治敬三の額には大きなホクロがあります。生まれたとき「あれ、この子のおでこに蠅がとまっとるでェ」で始まり、棺の中に横たわる敬三を、よくホクロを押して敬三が「ビー」と応えて遊んだ長女の春恵が、子供に「ビーしたげなさい」と送りだします。ホクロで始まってホクロで終わる、すごくいい映画を観たような心持ちになりました。著者はサントリーの社員でコピーライターである廣澤昌氏。いい本です。

アマゾンのサイト
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