太田直樹のブログ - 日々是好日

テクノロジーが社会を変える

主な活動(2020年10月更新)

いろいろやっており、お会いする方によって説明を変えているのですが、全体像は以下の通りです。ご相談、その他のお問い合わせはこちらまでお願いします。hello@newstories.jp

ウェルビーイングの価値を創出する

21世紀に入って、ウェルビーイングに関する学術論文が急激に増えています*1。株式会社New Storiesは、ウェルビーイング(WB)を行政や企業のサービスにデザインすることを通じて、未来の価値を作り出すことをご支援しています。フワッとした概念なので、具体例を見ていただくのが早いと思います。

kozatori7.hatenablog.com

2018年3月にパナソニックの未来戦略室とプロジェクトを立ち上げ、会津地域を主なフィールドにして、未来の価値創造に関心を持つ個人が、企業、ベンチャー、大学、行政から参加して、事業化を進めています。WBの研究者、ITの専門家、デザイン思考の実践者がメンターとなって、資料作成や会議ではなく、体験できるプロトタイプを参加者とつくり、フィールドで実証・実装していきます。

スマホで暮らしや仕事は便利になりましたが、小さなスクリーンの向こうは、ごく一握りの企業の「私有地」になっています。そして、WBへのマイナスの影響やプライバシーの侵害が顕在化してきました。一連のプロジェクトによって、人と人、人と自然が、モノやコトを通じてつながる「コモングラウンド(共有基盤)」が、近い未来に生まれる*2ことを願っています。プロジェクトで得られた知見は、公的な団体を通じて共有する準備をしています。

シビックテックが社会をおだやかに変える

一般社団法人Code for Japanの理事として、日本においてシビックテックが広がることを後押ししています。新型コロナウィルス感染が広がる中、シビックテックのコミュニティが立ち上げた東京都の感染対策サイトは、数千万のアクセスがあり、30以上の道府県や市に展開されました*3シビックテック(Civic Tech)って何でしょうか?

シビックテックとは、市民がテクノロジーを使って社会課題を解決することで、2000年代後半から世界的なうねりとなっています。具体的には、オープンデータを整備して、市民がデータを活用したサービスを開発する。あるいは、行政サービスのデジタル化において、アジャイル開発やデザイン思考を導入していく。こうした活動を支援しています。

個人的に力を入れているのは、兵庫県豊岡市のスマートコミュニティづくりです。豊岡市とトヨタ・モビリティ基金の連携によって生まれた豊岡スマートコミュニティ推進機構(TSC)の理事として、Code for Japanの力も借りながら活動しています。TSCの狙いは、中貝市長の言葉を借りれば:

  • スマートな技術で地方の「疎」の課題をカバーしつつ
  • スマートな技術によって、人々が多様性を受け入れ、フラットに繋がるコミュニティをつくる

というものです。

公共サービスを行政が一手に引き受ける時代は終わりつつあります。シビックテックの広がりによって、行政や企業、市民が、必要とされるサービスについてともにに考え、ともににつくることが当たり前になる*4ことを願っています。関心がある方は、毎年秋に開催されるCode for Japanサミット、あるいは定期的に開いているソーシャルハックデーでお待ちしています。

暮らしを支えるインフラをアップデートする

高市早苗前総務大臣の補佐として、2度(総務大臣補佐官、総務省政策アドバイザー)、政府で仕事をしました。総務省の所管は多岐にわたりますが、一言でいえば、暮らしに身近なサービス、例えば、人生の様々なイベントで手続きをする自治体、日々使っている放送や通信、災害や急病のときの消防や救急、社会や経済の動きを知る統計などのインフラを支えています。日本はすぐれたしくみを築いてきましたが、社会や経済、自然が激変する中で、アップデートしていく必要があります。

総務省の仕事は退任し、政府や行政での活動を行っています。具体的には、政府に設置されたデジタルガバメント閣僚会議の中のワーキンググループ、東京都宮坂副知事のDXフェロー、群馬県山本知事の2040年ビジョン策定のアドバイザーなどです。

2001年1月にIT基本法が施行されて以来、様々な国家的取り組みがありましたが、電子国家としての日本の競争力は、相対的に低下*5しています。巨大なしくみをアップデートするのは時間がかかりますが、組織の縦割りやセクターを越えて知恵や熱を運び、5年、10年先につながるような取り組みを一つでも多く仕掛けていきます。

選択肢をつくり、学びの土壌を育む

私は教育の専門家ではなく、自分のことを振り返ると学校教育にあまり適応できませんでした。しかし、常々、デジタル化の未開拓地は行政と医療と教育だと感じていました。多くの学校を訪れましたが、昔は社会の未来が見える場所だったのが、過去で時間が止まっています。他方、いろいろやってみて分かったのは、デジタル化のインパクトは、どうやら「個別学習最適化」のような、何をどう教える(学ぶ)ということだけでなく、学習者のやる気や粘り強さのようないわゆる非認知能力を育むことや、教室を社会に開いて、選択肢や出会いをつくるところに豊かな可能性がある、ということです。

未来の学びの兆しは、実は様々なところに現れています。

地域・教育魅力化プラットフォームの評議員として、地域に開かれた公立高校において、プロジェクト型学習(PBL)の最前線を広げています。また、高校の魅力化は、地方創生の梃子の一つであることを明らかにしました *6

みんなのコードの理事として、プログラミング教育の普及を支援しています。つくづく感じるのは、この活動は、知識やスキルだけでなく、子供たちが価値を生み出す体験や選択肢を広げているのだということです。

・New Storiesとしては、福山市の教育委員会に場をいただいて、教育に関わる企業、ベンチャー、学校、行政から個人が参加し、ハッカソンを通じて、100年以上変わらない、通知表や時間割、教室や職員室、さらには登下校といったものを、デジタルを通じてアップデートするプロジェクトを行っています。

都市集中型の未来に対しての代替案を生み出す

今日、世界人口の55%が都市に住み、その割合は2050年までに70%近くに達すると予測されています。他方で、古くから人が住んできた集落が捨てられつつあります。日本だけでなく、世界中で。このままでは、映画『ブレードランナー』のように人間が都市にしか住めなくなり、郊外は全て打ち捨てられてしまう未来に刻一刻と向かっていきます。

こんな課題意識で、2017年12月25日から、ヤフーCSF/慶應義塾SFC教授の安宅さんや、多様で濃いメンバーと一緒に「風の谷を創る」という活動をしています。主なメンバーのインタビュー記事は以下をどうぞ。

slowinternet.jp

風の谷は、人が少ない地域における「空間の作り方」を創り出すための活動を行います。都市に人が集まるのはとても合理的なことであり、それに対する代替案を創るのは長い時間を要するでしょう。大きな括りでは二つの検討テーマがあります。

一つは、人が少ない地域におけるインフラコストを劇的に下げる方法を生み出すこと。対象には、道路、水道、エネルギー、ゴミ処理、医療、治安等が含まれます。現在、過疎地の基礎自治体では、一人当たり100万から200万以上の公費を投入しています。

もう一つは、人が少ない地域でも、都市の利便性と楽しさに替わりうるような求心力を持つ空間を生み出すこと。都市は、上記のようなインフラのコスト効率が高いだけでなく、才能と情熱を引きつける魅力をもっています。

2018年はコアコンセプトを作りました。19年は、人口が少ない地域のインフラについて分析を進めました。20年は、いよいよ空間の作り方の検討が始まり、いくつかの地域とコンセプトの実証について議論を始めています。

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Photo: Kaz Ataka