太田直樹のブログ - 日々是好日

テクノロジーが社会を変える

2020年に学んだ33のこと

  1. ナウシカの腐海の知恵は、身近なところ、普段は目に見えない土中の水の循環や菌のネットワークにある。土はとても大事*1
  2. さまざまな分断があることを感じている。人と人、人と自然が、異なるけれども、関係しあえるという生命的な情報観からどんな未来が拓けるだろう*2
  3. 開疎化が、これからの社会やビジネスを考えるときの鍵になる*3
  4. トレイル(道)を通じて、社会や暮らしのあり方や、人間と自然との関係が今後どのように変わるのかが見えてくる*4
  5. スマートシティのブームは3度目だが、こんどのは大きい*5
  6. デジタル技術と社会について、我々は二つの重要な選択に直面している*6。一つ目は、全体主義的な監視か市民のエンパワーメントか。二つ目は、国家主義的な孤立かグローバルの連帯か
  7. 農林水産省のDXのノリ*7がヤバい
  8. 土木をハックする、土木技術を地産地消するというグリーンインフラ市民普請というムーブメントがある。例えば、コンクリートでがちがちに固められていた川が多自然に、コンクリートの擁壁が石積みになる
  9. 東京都から始まり各地で次々と公開される新型コロナ対策サイトを通して、オープンソースやシビックテック の可能性を体感した*8
  10. 日本には電子請願がない。日本国憲法には請願権があるのに*9
  11. 自治体から地方創生の計画づくりのために東京のコンサルタント会社に支払われた金額は20億円を超える(300以上の団体の集計)
  12. このままいくと、2015年から2040年の25年間で、一人当たり平均で自然資本を20%使う(中国は40%)。自然資本の半分は化石燃料で、残りは植物、動物、空気、水、土
  13. 豊岡からはじまったコウノトリの野生復帰が、200羽を超えた。コウノトリと人間の関係を通じて、農家が変わり、子供たちが変わり、景観や自然が変わり、ゆっくりと残したい未来が創られていく
  14. 教育改革とは、子供たちをどう教育するかということではなくて、大人たち ー 教師だけでなく、保護者や学校をとりまく地域、企業がどう変わるかというのが本丸だ*10
  15. 社会や経済を動かしているのは「物語」*11
  16. 焼酎は「大地の香水」である*12
  17. 菌がおりてくるように祈りながら造られているお酒がある*13
  18. 旅をしても食べたい焼き魚がある*14
  19. おはぎは、春はぼたもち、夏は夜船、冬は北窓と呼ばれる。なんて素敵なお菓子なんだろう
  20. 団塊世代は「死んだら終わり」という死生観が多い*15
  21. あの世とこの世のあいだがある*16
  22. ときどき「その日の天使」*17が現れる。ありがたい
  23. 「進化思考」*18は、未来を創りたい人の武器になる
  24. マインドフルネスで大事なのは、感情や身体感覚*19
  25. クリステンセン教授の遺した言葉*20。He(God)’s going to say…‘Can we just talk about the individual people you helped become better people?
  26. 哲学とは「たった今進行しつつあるのは何なのか、われわれの身に何が起ころうとしているのか、この世界、この時代、われわれが生きているこの瞬間はいったい何であるのか、われわれは何者なのか」を問うもの*21
  27. 絵本を読むことで、身体を通じて知恵を吸収している*22
  28. 町の図書館。人口が減るこの時代に、市民が「共」に図書館を創ることで、新しい社会の形を模索している*23
  29. 政と切り結び、民とフラットに交わる官僚がいる*24
  30. 「見られたがっている未来」を創るときに僕が借りている知恵です。3つの流れと12の知恵

    youtu.be

  31. 日本のデジタル化の現状の立ち位置は極めて厳しい*25
  32. デジタル化する社会で、コードは単なるプログラミングから、社会を形作る「法」になりうる。デジタル化途中の今は、4年に一度、数バイト書き換える感じだけれど、これを誰もが、いつでもできるようになれば、魔法のようなことが起こる*26
  33. 日本のデジタル・ガバメントには希望はある。いろんな持ち場にいる方に、心からエールを送ります。

    kozatori7.hatenablog.com

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Photo by Kaz Ataka

*1:今年は土に関する本をたくさん読み、専門家からお話を聞きました。藤井一至さんの『土 地球最後のナゾ』や高田宏臣さんの『土中環境』などがおすすめです。

*2:年越しに読んだドミニクさんの『未来をつなぐ言葉 わかりあえなさをつなぐために』は、いまでも身体に感覚が残っています。六本木でやっている「トランスレーションズ展」もおすすめします。

*3:開疎化がもたらす未来 - ニューロサイエンスとマーケティングの間 - Between Neuroscience and Marketing

*4:ニューノーマルにおける「移動」と「道」を考える(太田直樹)|翻訳書ときどき洋書|note

*5:Googleのngram viewerでトレンドを見ると、2000年初頭のe-businessに迫る勢い。

*6:ハラリのFTへの寄稿。Yuval Noah Harari: the world after coronavirus | Free to read | Financial Times

*7:チームがマニアックすぎて、シン・ゴジラの「巨災対」のような面々です。農地のデータ化と農業申請のデジタル化でどんな成果をあげるのか、目が離せません。

*8:グッドデザイン金賞をいただきました。このサイトを閉じる日が早くくることを祈っています。東京都新型コロナウイルス感染症対策サイトがグッドデザイン金賞を受賞|一般社団法人 コード・フォー・ジャパンのプレスリリース

*9:電子請願ではありませんが、行政と市民がオンラインで対話・熟議するしくみを加古川市とCode for Japanが共同で試行しています。兵庫県加古川市とスマートシティの推進に関する協定を締結|一般社団法人 コード・フォー・ジャパンのプレスリリース

*10:タイトルで誤解される人もいるのですが、竹村詠美さんの『新・エリート教育』は本当におすすめします。僕はいろんなところで配っています。

*11:2013年にノーベル経済学賞を受賞したロバート・シラー教授のナラティブ経済学

*12:黒木信作さんの言葉。尾鈴山蒸溜所で実験的な試みを続けている。

*13:利根川の源流がある武尊山の麓にある土田酒造。土田さんと杜氏の星野さんが挑戦する世界はとても楽しい。

*14:気仙沼の福よしさん。太田和彦さんの『居酒屋百名山』を読むと味わえますが、ぜひ気仙沼に足を運んでください。

*15:死生観そのものを掘り下げているわけではないのですが。「豊かな死生観」が未来への希望?元総務大臣補佐官・太田直樹さんが語る地方の可能性 | 未来想像WEBマガジン

*16:豊岡の演劇祭と西会津のまちあるき+演劇で体感したことです。

*17:僕の好きなエッセイに「その日の天使」というのがある。中島らもさんのものだ。少し抜粋すると、”こんな事がないだろうか。暗い気持ちになって、冗談でも”今自殺したら”などと考えている時に、とんでもない友人から電話が かかってくる。あるいは、ふと開いた画集かなにかの一葉によって救われるような事が。それは その日の天使なのである。”

*18:2021年春に太刀川英輔さんの本がでます。「未来は創るもの」を教えてくれた人です。NOSIGNER代表・太刀川英輔さんが、New Stories代表・太田直樹さんに聞く、「日本の組織を変革する方法」|INTERVIEW|Qonversations

*19:マインドフルネスについて語る人はたくさんいるが、ジェレミー・ハンターさんの理論・経験は僕にはしっくりくる。

*20:97年に論文を読んだときの興奮は、いまでもはっきり覚えている。直接お話したことはないけれど、BCGの同僚からよく話は聞いていて、この記事の最後の一節は、クリステンセン教授のいろんなエピソードを思い出しながら、とても胸に響いた。ご冥福をお祈りします。“When I pass on and have my interview with God, he is not going to say, ‘Oh my gosh, Clay Christensen, you were a famous professor at H.B.S.,’” Dr. Christensen told the Journal in a 2016 interview. “He’s going to say…‘Can we just talk about the individual people you helped become better people?…Can we talk about what you did to help [your children] become wonderful people?’”

*21:岡本裕一朗さんの『いま、世界の哲学者が考えていること』堀内勉さんの書評をお勧めします。https://honz.jp/articles/-/43418

*22:国立科学博物館の「絵本でめぐる生命の旅」。こどもたちが全身で学んでて、僕も少しそれを体感できました。

*23:いま、加賀市と豊岡市で遠隔で参画しています。

*24:”面白い人がいますよ”と藤沢烈さんに教えてもらって、ブログを読み、全勝さんに会いにいきました。5年前のことです。後々になって”なるほど”と思うことも含めて貴重なアドバイスをもらいました。全勝さんが書いた『新 地方自治入門』は、何度も読み返しました。ちなみに奈良の明日香村の人で、実家が近所でした。官邸の怪人、「民」と出会った衝撃 復興の現場で [アナザーノート]:朝日新聞デジタル

*25:日本を除くほぼ全ての国において、半数以上のサービスで10% 以上の利用割合 の増加また新規ユーザーの増加が見られる一方で、日本だけが、10% 未満の増加にとどまっている。マッキンゼーの緊急提言より。

*26:今年、もっとも刺激を受けたオードリー・タンさんの言葉。ぜひ動画を見てください。ユヴァル・ノア・ハラリ×オードリー・タン対談(1/3)──「ピンクのマスクはカッコいい」、誰もがルールづくりに参画できる社会の到来 | 湯川鶴章 | コラム | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト