太田直樹のブログ - 日々是好日

テクノロジーが社会を変える

i.schoolのシンポジウムで考えたこと

堀井先生に声をかけていただいて、i.schoolシンポジウムで話をさせていただいた。パネルディスカッションでは石川善樹さんがいい感じにかき混ぜてくれて楽しかったし、懇親会では熱量の高い質問が2時間続いた。

僕が話した概要はこんな感じ。その後の質問が、やっぱり面白いんだなあ。

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会津若松の事例から伝えたいこと

セクターや地域を超えて動いている。3つの方法で価値を生み出したい。知の探索、ルールのハック、プロトタイピング。だいぶ手応えがでてきた。

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New Storiesでつくりたい3つの価値

5つのテーマで知の探索。そこから会津若松でのプロトタイピングを設計、実施。未来戦略室のメンバーが素晴らしく、よい機会に恵まれたことに感謝している。

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パナソニックのプロジェクトの全体像

 「なぜ会津若松か」という話をこってりやったあと、プロトタイピングの設計原則のひとつを紹介。安宅和人さんの「未来を創る方程式=課題・願いx技術xデザイン」。いつか、もう少し体系的に紐解きたい。

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今回のプロトタイピングの設計原則のひとつ

日本の地域で仕事をするようになったきっかけについて。日立京大ラボの研究。これは反応が高い。

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僕らの社会の分岐点は2025年ごろ

システム変容における智慧。I、WE、ITフレームワーク。説明に苦戦。

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I, WE, IT フレームワーク

生まれた問いとさらなる問い

ルールの変化点にチャンスがあるとは、例えばどんなことか。

まず、日本企業は「ルールのグレーゾーン」に飛び込まない、という話をした。法的にはOKでも、メディアで叩かれるなどの社会的なリスクに対して、企業は過度に敏感だ。例えば「20世紀の石油」と言われるデータ活用について、日本で何かやるのは相当厳しい。なぜ、そうなのだろうか。どこから変わるのだろうか。

懇談会では、観光や教育や医療など、具体的な領域について話をした。企業には大抵「渉外部」があるけれど、どのように活用されているのだろうか。イノベーションや事業開発のプロセスに、積極的にルールをハックするやり方が入るには、どうすればよいのだろう。

i.schoolは3年前から、霞ヶ関の若手官僚とのワークショップをやっている。堀井先生と知り合ったのはそれを手伝ったからなのだけれど、来年からもう一段本格的なプログラムになると聞いている。

優秀な人が集まってやるイノベーションは筋が悪い、というのはどういうことか。

いろいろ説明不足だった。「優秀な人」というのは、問題を解くのが上手い人。不確実性が高まる中で、「課題解決志向」「ロジックツリーのような因数分解」が強すぎると、大事な問いの発見や多様な意見を聞くことが難しくなる。

デザイン思考がイノベーションに有効なのは、因数分解を手放して、発散するプロセスが理由のひとつだと思っている。「優秀な人」はこれが苦手で、「意味があるのか」「失敗したらどうしよう」というところで動けなくなってしまう。

システム思考も同様に「WHY」を手放すのだが、「優秀な人」は迷子になってしまいがちだ。さらに頭だけではなく「身体も使う」とかになると、、、

これらは技術というだけでなく、カルチャーの側面が強い。「我が社もイノベーションラボがあるのだけれど、沈滞している」という話を何人かの方から聞いたが、どのようにカルチャーをつくっていけばいいのだろうか。

i.schoolにもしっかりした方法論があり、2年目以降はプレイヤーからファシリテーターに軸足を移して、プロセスを回せる力をつけていく。

課題(IT)からではなく、私(I)から始めるというのがよく分からない。

何人かうなずいていたひともいたのだけれど、簡潔に短く話すのがとても難しいと思った。

遠回りかもしれないが、と思いながら紹介したのが「マイプロ」の「マイ」の話*1。高校生のプロジェクト型学習で、僕も最初は「社会の課題について意識が高い系高校生が集まっているのだろう」という先入観を持っていたところ「マイ」という当事者意識の力強さに圧倒された、という話をした。ITではなくてIなのだ。

関連して、Lifelong Kindergartenの紹介*2。人間がもっともクリエイティブと言われる幼稚園は、ある意味プロジェクト型学習のあるべき姿であること。そこでは、Project以外にPassion(興味があることをやる、当事者意識にもつながる)、Play(成功・失敗がない)、Peer(お互いに学ぶ)がある。ただ、小学校以降の教育ではその良さが失われていく。

ただ、「I」から「WE」につながり「IT」に広がっていくということは、ついに話せずに終わった。ここは今後も探求しよう。

「個の時代」ということだが、個が活かせる組織とはどうあるべきか。

「(個が活き活きしている)いい会社だなあ」と思うところはいくつかある。ただ、そうではない組織が大多数という状態はしばらく続くと思っている。

向こう5〜10年くらいの間に、企業のモノサシが少し変わるという話をした。具体的には、財務・会計に社会的インパクトが入る。また、社会的インパクトを重視する企業の「法人格」が日本でも生まれる(海外ではB-Corporationがある)。結果として、個人や投資家の企業を選ぶ目は、より厳しくなるだろう。

昨年ブレークしたTEAL型組織についての関心は、このあとどのように展開するのだろうか。