太田直樹のブログ - 日々是好日

テクノロジーが社会を変える

2018年に学んだ34のこと

  1. 「デジタル技術によって、より良い社会が作れると思うか」という問いにYESと答えた割合。中国71%、アメリカ38%、日本22%*1。Society5.0というビジョンは届くのだろうか。

  2. 中国は2020年までに、全国民の「社会的格付け」を導入する。評価は、オンラインの購買や情報検索だけでなく、現実世界の行動(例えば信号を守っているか)もデータとして日々蓄積・評価される。

  3. グーグルの先進的すぎるスマートシティが、地元(トロント)の反対でストップ。数年前に世界中から注目されたスマートシティ天津では、商業施設の70%、住宅の13%が空き家。

  4. 戊辰戦争150年を祝い、テクノロジーの梁山泊の様相を呈する会津がすごい

  5. 男性の生涯未婚率は、1980年に2.6%だったのが、2020年には26.6%で、つまり4人に1人は生涯結婚しない。アメリカでは、オンラインがきっかけのカップルが全体の3分の1で、大学が職場やバーを抜いて、友達経由と僅差の2位に。

  6. ひとのゲノム解析はすでに100万人を越えていて、7ヶ月で倍になるペースで増えている。2020年代の半ばには10億人がゲノム解析を行っていることになる。

  7. 英国で「孤独担当大臣」が新設された。英国人口6500万人のうち、900万人が孤独を感じていて、経済的な損失は年間4.7兆円という。

  8. 近い将来、人々がいちばんお金を払う対象は、高級車でも別荘でもファーストクラスでもなく、「ひとの側にいること(ピアエフェクト)」になるという未来像*2

  9. 動物の幸せを守るアニマルウェルフェアで、日本は中国やタイより下のDランク*3

  10. いわゆる「手つかずの自然」というのはほとんどない*4。どこも人間との交流があり、または厳格に管理されている。そして、凍ってない地表の半分では農林業が営まれている。すなわち、人と離れたところにあるのが自然ではなく、自然は人と共にある。

  11. 犂(すき)は人類最悪の発明だという*5。数世代にわたって耕すと、表土が2センチ、3センチと失われる。また、産業革命から20世紀の終わりまでに空気中に排出された炭素の3分の1は「耕起(結果としての有機物の分解)」によってもたらされた。いま、農業革命が静かに進んでいる。

  12. 人類は温暖化との戦いに破れつつある。1000年に一度という熱波(2003年にヨーロッパで7万人が亡くなった)は、今後は127年に一度の頻度で発生する。このまま温暖化が進むと、今世紀の終わりには、中近東はWBT(湿球温度)が35度を超えて居住不可になり、南アジアでも外出すると命が危険にさらされる。

  13. 人口12億人のアフリカのデジタルマーケットのゲートウェイとしてルワンダが注目されている。4G/LTEが国土の95%をカバーしている。ルワンダの次世代リーダーは、神戸情報大学院大学で数多く受け入れられていて、2018年には同大学とルワンダICT省で覚書が結ばれた。

  14. 中国との経済関係を深めてきたドイツだが、第4次メルケル政権における連立協定では、中国との経済協力について「機会とリスクが存在」とトーンが変わった。中国によるドイツ企業の買収を牽制する「対外経済法」改正の動きもある。

  15. 個人データが濫用されたフェースブックの事案が起こったが、2012年からほぼ同時に自分のデータを自由に持ち運びできる、データポータビリティを検討し始めた欧州と日本の差が明確になった。欧州は5月にGDPRを施行。日本の方は遅々として進まない。

  16. 経済産業省のデジタルトランスフォーメーション室(DX室)による民間からの採用枠2名に対して、600名以上の応募があった。

  17. 今年はマルクス生誕200年。20世紀に、社会主義という壮大な社会実験は失敗に終わり、他方で、リベラルが資本主義の課題を(マルクスの予想を上回る形で)解決してきたが、世紀が代わり、リベラルはいま存在感がない*6

  18. 資本主義を支持するミレニアム世代は4割。言論の自由を支持する高校生は4割。いずれも米国の話。

  19. 20代男性の3人に1人、女性の5人に1人が「無気力あきらめ派」*7。7年前より、それぞれ15ポイント、8ポイント増加している。これは日本の話。

  20. 市場原理の失敗は、再配分政策や独禁法などでカバーするよりも、市場を究極まで活用して解決するというアイデアがある*8

  21. 『サピエンス』の著者ハラリの近著『ホモデウス』によると、近い未来、データとアルゴリズムが「神」になる。本書の最後に、データとアルゴリズムが人間の知能を代替していくとき、意識とは何かという問いがある。

  22. 「一つの脳に一つのこころ」ではないかもしれないこと。「あなたはわたしの心の中に生きている」というのが比喩ではなく、そのままのことが起こっているかもしれないこと*9

  23. 幼稚園は1000年に一度の発明であること*10。学び方はずっと幼稚園のやり方でいい。

  24. 地方の里海里山にある公立高校で、地域外の子供が3年間学ぶ「地域みらい留学」の説明会に1000名以上の中学生と保護者が参加した。何が未来に必要なのか、子供がもっともわかっていると思う。

  25. プロジェクトによる学びのフロントランナーであるマイプロ。「きみだけのドラマを語れ」という呼びかけに、全国から2000人の高校生が集まったこと。

  26. 文科省と経産省の課長が、教育の未来を語り合った*11。縦割りは超えられる。

  27. 100年後の約束を守るひとたちがいる*12

  28. 河童に選挙権という発想の可能性*13

  29. 震災を体験した東北で「未来を拓く」意思をもった人々が暮らしていること。

  30. 未来を作る方程式「願いx技術xデザイン」を会津でやってみたら、やっぱりそうだったこと。

    kozatori7.hatenablog.com

  31. (主観的な体験だけれど)人間より大きな動物と一緒に数時間いると五感が開かれる。

  32. (これまた主観的な体験だけれど)自分と根っこでつながり、他者とも根っこでつながり、自然ともつながるような経験をしたこと。

    medium.com

  33. システム変容を扱うファシリテーションをやったこと。

  34. 映画「ブレードランナー」のような未来が着実に近づいている。なぜ、テクノロジーが発達した今日、昔から人類が暮らしてきた豊かな地方で暮らせないのだろう。

    www.future-society22.org

    コクリ!キャンプ建長寺2017で生まれた「風の谷」という活動は、2017年12月25日にキックオフし、2018年は14回開催。ここでは実に多くの学びと行動があった。秋からは慶應SFC安宅ゼミの学生が参加。年明けには実証フィールドが決まる予定。

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    「風の谷」遠野合宿

     

*1:デジタルエコノミーで脱落しつつある日本 - 太田直樹のブログ - 日々是好日

*2:石川善樹さんと山口揚平さんとの対談。100年にいちどの新市場と10年後に人々がもっともお金を払うこと - 太田直樹のブログ - 日々是好日

*3:アニマルウェルフェアとは何か――倫理的消費と食の安全 (岩波ブックレット)
枝廣 淳子 http://amzn.asia/d/hjU0OpV

*4:「自然」という幻想:多自然ガーデニングによる新しい自然保護、エマ・マリス http://amzn.asia/d/1ze1kxk

*5:土・牛・微生物ー文明の衰退を食い止める土の話、デイビッド・モントゴメリー http://amzn.asia/d/62sFCSa

*6:Rulers of the World: Read Karl Marx! – The Economist – Medium

*7:データで見る日本のミレニアル世代の特徴|アデコ株式会社

*8:メルカリ化が世界を救う?| 「所有」がない社会モデル - 太田直樹のブログ - 日々是好日

*9:わたしは不思議の環、ダグラス・ホフスタッターhttp://amzn.asia/d/3ZVO7y7

*10:ずっと幼稚園児でいいのだ|テクノロジーによる暗い未来を変える”1000年間における最も偉大な発明” - 太田直樹のブログ - 日々是好日

*11:文科省と経産省の担当課長が教育を語り合う。「描く未来像は重なっている」

*12:”あなたたちのような街の人間は明日の予定をよく聞いてくる。しかし、私は、今のことしか約束できない。未来について約束せよというのなら、百年後の約束ならできる。あなたはできるか。私は、今とずっと後のことだけを考えている。だから、明日の約束はできないが、百年後の約束ならできる。”(ノモレ、国分 拓より、http://amzn.asia/d/bmNAPtZ

*13:民俗学者の畑中章宏さんが書かれた『21世紀の民俗学』(角川書店)の中で、思想的に通底するアイデアを見つけました。畑中さんによれば、柳田国男は、「死者や精霊も社会の一部だと訴えて」いて、死者の投票権や政治参加を考えていたそうです。それに倣って、畑中さんは死者を含んだ民主主義を実現するために、「河童の選挙権」を呼び掛けているのです。なぜ河童かといえば、河童は「共同体の外側から流れてきた多くの死者に対する『うしろめたさ』の感情や、死者たち自身の悔恨」が形になったものだからです。つまり河童とは、死者や後悔ややるせなさの究極的な受け入れの表象であり、「災害による大量死を背負っている」のです。私は、この話には単に「面白い」だけでは終わらせたくない何かがあると感じました。そこでいま、死者の意思を取り込んだ新たな合意形成システムをネット上に創ることができないかと考えているのですが、そのためにまず死生観を巡る議論の学習をしているところです。”(ドミニク・チェンさんのインタビューより)