”おそらくもっとも驚くべき結果は、日本の位置付けだろう” とレポートで言われたように、日本はデジタルエコノミーのスコアで主要国最下位となった。この調査は、世界経済フォーラムでも記事*1になっている。。
まずスコアの要素をまとめておく。大きくは「デジタル業界のダイナミクス」「デジタル経済の広がり」「デジタル経済への信頼」の3つだ。それぞれ、統計とアンケートで以下の要素を分析している。
・ダイナミクス:ICTセクターの強さ、専門人材の量と質、フロンティアへの挑戦
・インクルージョン:デジタル化の広がり、デジタル関連の仕事の機会、デジタルサービスへのアクセス
・トラスト:セキュリティ、プライバシー、将来への期待
日本はダイナミクスでは6位。政府・民間のR&Dの費用、ICT業界の大きさが貢献している。しかし、インクルージョンとトラストは10か国中で最下位だ。
調査方法がおかしいのだろうか。そうではないように思う。
情報化社会で敗戦した構図をまだ引きずっている
日本は、ICT業界の生産性は高めてきたが、利用する側の生産性は低いままだった。また、100万人のIT人材のうち、7割以上がIT業界にいるというのは、米国とは真逆だ。ダイナミクスはそこそこ高いが、インクルージョンとトラストが低い、という構図はそれと整合している。
短期的には、厳しい状況が続くだろう。Society5.0という戦略は、政府や経済団体がいくら旗を振ろうが、あまり成果もあがらず、忘れ去られていく*2のではないか。企業の経営幹部と接していて思うのは、デジタル経済の知識があるかどうかという以前に、関心や好奇心がまるでない、ということ。
さらに言えば、ファーストリテーリングの柳井さん*3やパナソニックの馬場さん*4のように、デジタルで「世界一」を言う人が、もっとゴロゴロいてもいいのではないか。
小手先の戦略に走らずに土を耕す
時間はかかるが、投資すべきは人だ。STEM教育に力を入れる。いまの中高は、なぜ数学嫌いを量産するのか、真剣に見直す。プログラミングだけでなく、デジタル社会のリテラシーも高めていきたい。
大学のコンピューターサイエンスでは、慶應SFCで小さいけれども強い光が灯っている。会津大学のような地方の公立も注目されている。こうした光を全国に広げていく。
企業では、経産省が初めて人材育成に正面から取り組んだ「第四次産業革命スキル習得講座認定制度」*5の給付金を最大限活用する。次々といい講座が認定されている。
焦って苗を植え、肥料をやるよりも、いい土を作るのが大切ではないだろうか。
*1:ダボス会議でデジタルについて発言する日本のリーダーは、この記事を心に留めておかれた方がよいと思う。We no longer have faith in technology to solve global issues | World Economic Forum
*2:実際、グーグルトレンドでも2001年のe-Japanはもちろん、2008年のu-Japanと比べて、ほとんど話題になっていない。
*3:ユニクロ・柳井氏進言「BツーBではパナソニックブランドは輝かない」
*4:パナソニック、ついに姿を現した「HomeX」--馬場本部長が語る「毎日が昨日よりも良くなるくらし」 - CNET Japan
*5:制度を作った伊藤さんの記事。スキルの賞味期限は短い 人材力を高めよ | 経済産業省 METI Journal