<ASK MEについて by 太田直樹>
僕が30を過ぎたころ、当時のBCG代表の内田さんから「会いたい人には必ず会える」と聞き、以来、いろんな人に会ってきました。
気がつけば「会いに来てくれるひと」がポツポツと増え始めました。最近、アドバイスをすることが苦手になってしまい、結構「雑談」という感じです。ただそのことをシェアすることで、何か化学反応が起きないか。そう思いついて実験的にこのコラムを始めました。
<今回のひと>
アパレル企業のCSR部で仕事をしているひとから連絡をいただきました。以下は、「気づいたこと」としていただいたものです。
弊社の課題として、CSR活動は様々なかたちで実施しているものの、それが社会の何を解決しているのか、長期的に会社の価値にどうつながっていくのかなど、目指す先(ストーリー)が不明確だったということが挙げられます。
まず、私たちは社会から何を期待されているのか、ということを把握する必要があると考え、今回、太田さんのお話を伺う機会を頂戴させていただきました。
太田さんとの話の中での気づきは、以下の3つです。
- お客さまや従業員の意思決定には、CSRの観点がどれほど影響を与えているのか。
- いちばん近いステークホルダーであるお客さまや従業員の意識に、CSRの観点はどこまで影響を与えているのかを何らかのかたちで把握し、それに対応するかたちでのCSRなのか。それともステークホルダーの関心に依らずCSRを推進するのか。どちらを会社として意識しているのかによってどのようなCSR活動を展開していくのか変わってくる。
- どのようなステークホルダーがいて、それぞれとどのような関係性を築き、CSRを進めていくのか、ということを明確にすることが必要である。
- 地域フォーカスをどう考えるか。
- 創業地や本社を置く地域、全国の店舗など様々な地域に関係がある中で、地域フォーカスをどのように考えていくのか、整理が必要である。
- 地域フォーカスを推進するのであれば、その行政や企業との連携が必要になってくるし、一緒に動く企業や行政があることで、社会的インパクトを出せる可能性がでてくる。
- 点在している活動を面として広げるためには、アイデアももちろん重要だが、その地域のキーマンやそこに集まる人たちとのつながりがより重要である。
- CSR活動はオープンに。
- CSRは、会社を取り巻くお客さまや従業員との関係性をどのように築いていくか、ということ。CSR活動は利害相反がないため、異業種の組織などと組んだりしながら、活動をオープンにしていくことで社会的インパクトにつながるのではないか。
今回のお話を伺う中で、実験的な姿勢と中長期計画のバランスが必要だと感じました。社会(ステークホルダー)の変化を捉え、それに応えていくことがCSRだとすれば、全てが自分たちの思い通りにはならないことは当たり前であるし、目指す先を描きながらも誰とどんな関係性を築くのかという軸はぶらさずに、柔軟に活動を進めていくことが理想なのではないか、とお話を伺いながら考えておりました。
また、地域での活動に会社として課題をもっていたため、太田さんから様々な組織や人、おもしろい取り組みなどをご紹介していただけたことで、次の活動のつながりそうなものを多く教えていただきました。
昨年、政府がESG投資の方針を大きく打ち出し、またSDGs関連のニュースも増えています。一方、CSRについては、「形だけ」だったり「必要コスト」という企業が大半です。
そのような中で、CSRを経営の中核にすえる会社が現れてきています。少し前に、早稲田の入山章栄さんが 「経営と”よい社会をつくること”が同期する時代がやってきた」という話をしていたことを思い出します。
それを具体論に落としていくことはどういうことなのか。お話を聞きながら、様々な機会と課題が見えてきました。(太田直樹)