太田直樹のブログ - 日々是好日

テクノロジーが社会を変える

3分で分かる「官民データ活用推進」の滑り出し

10月27日に、我が国の成長戦略の柱となる「官民データ活用推進基本計画」の最初の振り返りが、実行委員会で行われた。定量的に見る限り、21名の委員のうち欠席12名・代理出席1名、ニュース記事ゼロということで、残念なことに「本気度」が低く、したがって社会に発信もなされていない。

この戦略は、5つの施策群と8つの重点分野で成り立っている。基本は、各省庁の関連施策を集めたものだ。施策は258あり、うち131が重点施策だ。

取りまとめをしているのは、内閣官房のIT戦略室。ここには実働部隊はいないので、5月30日に計画発表を行ってから、役割はPMOと言ってよいだろう。PMOが機能するのは簡単ではないが、政府のITコスト削減では実績*1がある。成長戦略は、もう一段難易度が上がるが、どうだろうか?

PMOという観点から、重点分野のうち2つを取り上げてみる。

まず、電子行政。行政には約43000手続があって、年間13.6億件処理されている。現時点で、5000手続、9.7億件がオンラインになっている。ここまで来ているのであれば、PMOとしては、いくつかのモデルとなる自治体と組んで、紙の使用量を10分の1、手続時間を3割削減するボトルネックを特定・対処する道筋をつけられるのではないか。

つぎに、農業。「全国農地ナビ」のページビューが15年4月開設時の38万から、直近は400万超まで増えている。データの集約や利用が着実に進んでいる。他の施策に「農業情報の標準化」と「農業データ連携基盤の構築」がある。注意すべきは「農業データ連携基盤」だ。全国で200ほど作られて、ほとんどが開店休業になっている医療情報連携基盤の轍を踏まないよう、目を光らせた方がいい。

全国に農業経営体は約137万あるが、うちデータ分析を行なっているのは2千ほどと思われる。これらが、どういった使い方をしているのか、PMOも現場に足を運んで*2見に行った方がいい。

他に6分野あるが、PMOとしてどう分析しているのかは、よく見えない。重点施策だけで131もあるので、このまま地域に降ろしても、混乱するだけだろう。

自治体として、この基本計画を踏まえて、どのように地域に落とし込んでいくのか。これについては、別途取り上げてみたい。

*1:ITダッシュボードで現状を見える化。各省庁がバラバラに構築していた1450のシステムを6割減らし、1100億円(29%)の運用コストを削減。

*2:例えば、宮崎県児湯郡。ICTにどれくらいのコストをかけて、どう使い、どんな成果があるのかが分かる。「儲かる農業」を推進 宮崎県新富町でアグリテックイベント開催 - 西日本新聞