太田直樹のブログ - 日々是好日

テクノロジーが社会を変える

「下克上」はこういうところから起こるのかもしれない - 高知県山田高校

外から見たら普通なんだけど、中に入るとスーパーインテリジェントという高校にしたいんです。

と目をキラキラさせて話す、高知県立山田高校の濱田久美子校長は、(失礼ながら)ちょっと尋常ではない、くらい攻めている。「地域に開かれた教育課程」というのは、2020年以降に実施される学習指導要領だけれど、濱田校長の話は、未来のコトのような気がした。

所は、高知県の郡部。東京一極集中&高知市一極集中で、ずっと定員割れが続いていた高知県香美市の県立高校だ。濱田校長の改革で、着実に生徒が増えている。

高校1年生で、地元の企業でインターンをして、CM*1を作る。高校2年では、地域の課題に向き合うプロジェクトに、地元の経営者や高知工科大の学生とチームを組んで取り組み、尾崎知事*2にプレゼンする。先生は後ろに下がっていて、民間の地域コーディネーターを大胆に活用している。

商業科では、企画力を磨いていて、高校三年生が企画した「山田まん」という饅頭 *3は、発売2年目で、なんと年商5千万円。

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高知県全体では、「生徒数が減っても、安易に学校を統合して教育機会をなくすな」という尾崎知事のビジョンの元、全国に先駆けて遠隔教育に取り組み、嶺北など山間部でもオンラインで高度な学びの機会がある。山田高校でもオンラインの英語学習が盛んだ。

 

少しマニアックな話をすると、全国どこに行っても県立高校はやっぱり県を向いていて、教師も管理職も異動が多く、地域から距離があると言われるところが多い。山田高校の場合、濱田校長は「うちは市立」と公言し、年始には地元の商工会と挨拶を欠かさない。

また小中学校を担当する市の教育委員会と高校を持つ県の教育委員会の間には、これまた、どこに行っても高い壁があるのだけれど、それも乗り越えようとしている。

 

「うちの生徒は、たぶん全国でもっとも本気の大人と接する機会が多い。そして、地元が大好き」と濱田校長は言う。教育改革は時間軸が長い。けれど、未来を切り開き、既存の序列*4を変えるような「下克上」の人材が、この地から現れると思う。

*1:例えばこんなの。地元の人も知らなかったらしい。

www.youtube.com

*2:高知の基準でも酒が強い。昨年、飲んだときに同い年というので、話が盛り上がった。同県の産業振興戦略は、企業の中期経営計画のようだ。

*3:電通で名の知れたクリエイターで、独立後、島根県海士町の「ないものはない」をデザインした梅原真さんが関わっている。お会いしたことはないが、辺境&一次産業にしか興味はない、という変わり者で、香美市に拠点を構えている。「山田まん」は見た目にインパクトがあって、食べるといい感じに生姜が効いていて美味しい。

umegumi.jp

*4:話は逸れるが、県と市町村に溝ができる原因として、高校の序列が仕事に持ち込まれるから、という話を聞くことがある。「お前はXX高校なんだから俺の言うことを聴くよな」という感じ。