太田直樹のブログ - 日々是好日

テクノロジーが社会を変える

グローバル化の本質とは? その壱


週末の勉強で、昨年話題になった『人々はなぜグローバル化の本質を見誤るのか』(水野和夫氏)を読みました。正直なところ「?」という印象でした。部分部分は興味深く、特にコンサルタントのわたしにとってはグラフや数字が豊富な本書はツボにはまるのです。

が、全体的にどこか整合性に欠けるような・・・そして、結局「水野さんの言いたいことは何?」という読後感でした。まあ、それは我々が考えればいいのでしょうけれど。

ただ、グラフと数字はいい、というか好きですね。

まず気に入ったのは、紀元前100万年前(!)から西暦2000年までの1人あたりGDPのグラフ。両軸が対数軸になっていて、まさに「マニア好み」のグラフですね。このグラフには、変極点が3つあります。まず紀元前の農業革命。次に中世に入る前の封建時代の危機。そして、1990年でGDPの伸びは鈍化しています。水野氏は、英雑誌エコノミストの言葉を引用し、資本主義は賞味期限が切れつつある、と言います。

どうなんでしょうかね。私の最初の課題意識はココです。

次に、横軸が1人あたり所得、縦軸がGNPの年成長率で、主要国をマッピングしたグラフ。国をプロットすると右下がりの直線が引けます。すなわち、1人あたり所得が高くなるほど、成長率が落ちるということです。意味合いとしては、(経済的な富で測れる)豊かさは、ある一定の水準に収斂する、ということだそうです。

さらに、後から発展する国の方がグラフを右下に下るスピードが速いということで、米国が100年かかったなら、日本は50年。すると中印はもっと速いというわけです。まあ、直感的にそうだろうと思いますが、改めて分析を見ると、中印はあっと言う間に日本に並ぶんだろうけど、短時間でそれをやるというのは随分いろいろ無理がかかるだろうなあ、と感じた次第。そこに商機があるかな。

上の分析をもとに、水野氏の主張の一つ『帝国化』に関するキャッチーな数字が算出されます。16世紀に、中国、インド、ロシア、トルコの4帝国が人口と経済に占める比率は(うろ覚えですが)各5割程度。一方、後の先進国群は、各2割弱。それが2000年には、4帝国の経済力は2割に落ち、代わって先進国群が5割を押さえている。しかし、2050年には、先進国は低成長の「ポストモダン=新中世」の時代に入り、変わって近代化を驀進する4帝国が、再び経済の5割を押さえる。ただし、アメリカのみは、しばらくは(2025年までだったかな)「金融帝国」として頑張るという予想です。

水野氏は、今の先進国と比べて、人口と経済のバランスがとれていていいんじゃないの、と書いています。まあ、そうかもしれませんね。

ただ、気になるのは上の二つの分析で、「人類の経済成長は頭打ち」「国別に見ると先進国は頭打ち」というところです。

次回、そうならないシナリオを考えてみたいと思います。でも、難しいかな、これは。