太田直樹のブログ - 日々是好日

テクノロジーが社会を変える

女房には読ませられないなあ


今年も上野の鈴本演芸場に初笑いに行ってきました。年初の席は出演者が多くてゆっくり噺を聞く感じではないのですが、なにかこう賑やかでいいですね。

朝、昼、晩と3回の公演があり、昼の「喬太郎+小朝」をとるか夜の「さん喬+権太楼+小三治」をとるか迷いましたが、結局夜にしました。しかし行ってみるとなんとさん喬と小三治は休み!まあ年初で噺家さんもいろいろ廻るところがあるのでしょう。

権太楼は相変わらずいいですね。挨拶程度の時間しかないので、おなじみの海外旅行でのエピソードの小噺だったのですが、腹の底から笑えます。あとは去年寄席で初めて見て気に入った柳家紫文の三味線漫談。これはねぇ、聴いてもらうしかないのですがほんとに面白いんですよ。

帰りに古今亭志ん朝の親友だった伯楽さんが書いた「小説 古今亭志ん朝 芸は命、恋も命」を買って帰りました。

で、この本を読んでびっくり。かなり生々しい志ん朝の恋話と芸へのこだわりが描かれているのです。

まず話のレベルがすごいんです。最初の恋の相手は、ある右翼系団体の大物の愛人。芸人の旦那を気取るその大物が囲っている若き愛人と志ん朝がお互いに惹かれあい、結末はその女性の自殺なのです。

こう書くととてつもなく暗いのですが、いくつかの恋の話(+もちろん芸談)を通じて描かれるのは「男の美学」という、おそらく今は死語になってしまった生き様です。

当代イチの遊び人だった文楽からの志ん朝へのアドバイス。そして、志ん朝の芸と恋への打ち込み方。男はかくあるべしという(あくまでもひとつの)見本でしょう。しかし故人とはいえ、こんなに赤裸々に書いてしまっていいものなんでしょうか。

翻って自分は、というのは止めにしたいのですがスケールが小さくて悲しくなりますね。比べてみたって仕方のないことなんですけれど。

志ん朝の粋
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