News Picksのインタビュー記事にいろいろコメントをいただいた。考えたこと、補足などをまとめてみた。
止まらない都市化と風の谷
地方(創生)にお金を使うことへに反対という声があった。記事でも明言しているが、いまのインフラを前提とした施策は上手くいかないだろう。例えば、コンパクトシティ。この安宅さんの分析を見れば明らかだが、道路、水道、医療などのインフラを維持するためにベーシックインカム級の税金が投入されている。いまのシステムを変えずにコンパクト化しても、それは問題(と借金)の先送りにしかならないだろう。
「風の谷」プロジェクトにはいくつかのモジュールがあるが、その一つはインフラをゼロベースで見直す検討をしている。今年中には、実験フィールドでプロトタイピングが始まる予定で、先日、小田原市の加藤市長と意見交換させていただいた*1。
個の時代と行き来する人
「これからは個の時代」「都市か地方かの二項対立ではなく、行き来する人」というライフ・ワークスタイルには、共感の声が多く寄せられた。なかでもこの表現は素敵だ。
土地の歴史や息吹を感じ取れるオフグリッド生活者といったロールモデルが出てくると変わってくるのかなぁ。 (NewsPicksコメントより)
ただ、こういう暮らし方、働き方は限られたひとしかできないのでは、という声も。僕が地方を歩き回っている感覚では、近い未来は限られた人数規模だけれど、それは経済的なことではなく、意識にあるように思う。
実際、多拠点居住者に不動産をサブスクリプションモデルで提供するADDress(僕はアドバイザーとして参加)によると、第1期30名に1000人以上の応募があり、その内訳は20代・30代が7割、東京都居住が5割強だ*2。職業から推測される年収はばらついている。
またADDressでは、交通などもサブスク化する予定で、経済のハードルはどんどん下がっていく。この「行き来する人(リクルートのトレンド予測では「デュアラー」)」は、教育や医療などで新市場を形成していくと見ている。
テクノロジーへの不信とデータのコモンズ化
一部の企業がデータなどの技術を独占的に利用することについての課題意識について、多くの声があがった。
世界経済フォーラムの昨年10月の記事にある「デジタル技術が社会を良くするという問いに、日本人は世界でもっとも悲観的」という分析は、このブログでも取り上げたが*3、今月のダボス会議では、明確にその課題意識が参加者に共有されていた、とグロービスの堀さんのレポートにある。
日本から参加した安倍総理のスピーチでは「データの自由な流通(Data Free Flow with Trust)が提案され、日本で初めて開催されるG20大阪サミットで、具体化されるだろう。日本発のユースケースとしては、コマツが2017年に始めたLANDLOG(土木建設工事のデータと分析のプラットフォーム)は、企業や国境を超えてデータが流通することのインパクトを明確に示すだろう。
近未来のユースケースとしては、学習データと分析のプラットフォームを日本から提案できないだろうか。埼玉県では、学力調査をデジタル化し、小学4年生から中学3年生までの30万人のデータを分析し、活用している*4。その取り組みはOECDからも注目され、国内では福島県や広島県に広がりをみせている。
日本の初等教育は世界でも最高水準なので(教師の業務改善の余地は大きいが)、データと分析の流通は、世界に大きなインパクトを与えるだろう。