JICAでICTのスペシャリストとして活動している渡辺英樹さんは、グローバル全体が担当領域だが、最近は4割の時間をアフリカに費やしていると聞いた。特にルワンダ。1994年に20世紀最悪と言われる虐殺があった国だが、2000年のカガメ政権発足後、躍進が始まった。
ルワンダは4G/LTEが国土の95%をカバーしており、スマートシティを推進する首都キガリでは、様々な実証実験のフィールドとなっており、カーネギーメロン大学のアフリカ校も開設された。
特筆すべきは、「アフリカの入り口」として、カガメ大統領がSmart Africa*1というアフリカ全体のスマート化の取り組みを牽引していること。アフリカ発のイノベーションとしては、モバイル決済のM-pesaが知られているが、今後、新たなものが次々と生まれてくるのではないだろうか。
2040年までに、世界のICTインフラの投資ギャップは1兆ドル*2になると見られている。その内、半分はアジアだが、3割を占めるアフリカがそれに続く。
PPPが求められるわけ
G20の主要な取り組みの一つであるGlobal Infrastructure Hubの分析によると、投資ギャップを埋めるには民間だけでは不足で、PPPによる政府の関与が重要だと言う。特に、ADBやAIIFといったMDB(multilateral development bank)が果たす役割が拡大すると言っている。
道路などのインフラならともかく、ICTの投資でPPPが有効なのだろうか。ビジネスの分からない政府が口を挟むより、民間に任せておけばいいのではないのか。
PPPが必要な理由は、民間には新興国のインフラ投資よりも魅力的な機会があり、しかも、インフラ投資案件の実に6割が「バンカブルではない(融資が難しい)」からだ。
バンカビリティが低い理由は6つに整理される。
・契約や案件のプロセスが無茶苦茶
・適切なコベナンツがない
・償還請求(リコース)ができない
・デューディリジェンスが難しい
・よく構造化されたコンセッションがない
・支払いのしくみが不明確
バンカビリティを高めるのは、まずは投資先の政府の役割だが、政府系のファンドが価値を創造できるのは、政府対政府でそのプロセスを加速、強化できるからだ。
ルワンダと日本
アフリカに話を戻そう。実は、ルワンダのICT人材を数多く受け入れている日本の大学がある。神戸情報大学院大学だ。同大学は2012年にJICAがアフリカの上級行政官を対象にした「ICT活用による開発課題解決」という事業を受託し、以来、留学生の受け入れに力を入れている。2年前に訪問した際に、留学生と話をしたが、皆が国の将来を背負うエリートで、かなり優秀だったことを覚えている。
神戸情報大学院大学は、ルワンダICT省と2018年4月に覚書を締結している。また、神戸市役所もルワンダと積極的な交流を推進している。
ただ、残念なのは日本企業のプレゼンスが低いこと。スマートアフリカのPrivate sectorのパートナーに日本企業はない。
そんな中で、ベンチャーキャピタルのサムライインキュベートは、この5月にアフリカのスタートアップ投資・インキュベートを目的とする子会社をルワンダに設立している。これは注目したい。
*1:アフリカの54ヶ国は、経済発展や政治状況などバラバラだと言われているが、Smart Africaでは「シングルマーケット」を目指している。http://smartafrica.org
*2:G20の分析による。Peerのベストプラクティス並に投資するというのが需要で、供給は過去の投資トレンドの延長、この差を投資ギャップとしている。