太田直樹のブログ - 日々是好日

テクノロジーが社会を変える

答えはないのだけれど、分断を越えて議論したい問いとは?

マルクス生誕200年に寄せた一文をプロローグに、The EconomistでOpen Futureという興味深いプロジェクトが始まった。意図としては、リベラリズムの価値を問い直すということ。どんなテーマと問いがあるのだろうか。

グローバル化とか競争とかちょっとピンとこない|Open Market*1

1990年以降に10億人が貧困から抜け出した。まるっと見ると良くなった。ただ、先進国に目を向けると、中間層が没落。中でも米国では、35年間で上位1%の富裕層の収入シェアが倍増し、企業の利益は15年間増え続けた。それを見て育った35歳以下のいわゆるミレニアム世代は、4割しか資本主義を支持していない。

自由貿易っていいことなのだろうか。市場で競争原理は働いているのか。経済における政府の役割は変わるのだろうか。ベーシックインカムに可能性はあるのか。

言論の自由にも程がある|Open Ideas*2

「言論の自由」を愛する人は多い。そして、今は黄金時代のはずだ。誰もが多くの人に自分の考えを発信できるし、政治家もいつでも直接民衆に話すことができる。しかし、言論の自由を最も大事にしてきた米国で、「公の場で他人に対して攻撃的な発言をしても許される」あるいは「ソーシャルメディアで他人を攻撃する発言をしていい」を支持する高校生は、それぞれ45%と43%だ。

「攻撃されている」というのはかなり主観的な判断だけれど、もし何らかの介入が必要だとしたら、それはどのように可能なのか。悪用されたりしないのか。

抑えの効かない正義にちょっと引く|Open Society*3

多様性も総論では賛成な人が大多数だけれど、分断が拡大している。一方では、多様性を阻む構造的な要因があって、#MeToo運動がセクハラのブレークスルーになるように、社会的な運動が必要という人がいる。他方、最近はそれが行き過ぎていて、ちょっと息苦しいし、場合によっては魔女狩りや私刑になっているのではないかという声も出てきた。

この二つをどのようにバランスさせることが出来るのだろうか。

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日本ではないことになっている移民問題|Open Borders*4

移民についても分断があり、経済的また道義的な理由による賛成派に対して、「社会が壊れる」という反対派の声が高まっている。

ただ、人間の貧富を決める最大の要因は「どの地域で生まれるか」であり、また(移民と区別すべき)難民も増加傾向。国境を超えたい人は増えていく。

移民の人数は推定2億6千万人。2000年から17年までに8千5百万人の増加*5(年500万人)。難民の人数は6千5百万人だけど、そのほとんどは「豊かな国」には辿り着けない*6

先進国はどうすべきだろうか。最近急増した日本に暮らす外国人は250万人だけれど。

シリコンバレーにはどんな奴が住んでいるんだ?|Open Progress*7

テクノロジーに「良い」「悪い」はないが、これまでは良いことの方が多かった。今はマイナスが多いのではないか。米国のテクノロジー企業は強くなりすぎたのではないか。また、AIやロボットは脅威の方が利便性を上回るのではないか。恩恵は一握りの人に⁉︎

リベラリズムは、19世紀には個人対国家に関わってきた。20世紀には個人対官僚や企業。そして今世紀には個人がテクノロジーを取り戻すことを後押しするのだろうか。