太田直樹のブログ - 日々是好日

テクノロジーが社会を変える

”人工知能は共産主義的” by ピーター・ティール

ペイパルの共同創業者で、テック企業がトランプ政権に距離を置く中で、特異な立場をとっているピーター・ティールと、元ペイパルの副社長でLinkedInの共同創業者、トランプ政権のひどさを訴えるためにカードゲームを作ってしまったリード・ホフマンがスタンフォード大学で対談した。1時間20分ほどの映像だけれど、いろいろ見所がある。

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会場からの「(スタンフォード在学中ではなく)今の時代に出会ったとしたら、お二人は友人になっていましたか」という質問には笑ったが、ハイライトはティールのこの発言だろう(映像では開始から20分あたり)。

暗号(通貨)とは分散化*1させることであり、人工知能(AI)とは中央集権化すること。イデオロギー的に表現するなら、暗号(通貨)はリバタリアン(自由至上主義者)、AIはコミュニスト(共産主義者)だ。

”だから、中国共産党はAIに好意的で、暗号通貨を嫌うんだ”と続く。

さらに、中国が技術的な優位を築いていることについて、シリコンバレーは正面から向き合っていない、と論じて、それに同意しないホフマンと議論する。

それにしても、中国におけるAIへの投資はすさまじい。

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Source: CBINSIGHTS

AIが実装される未来が共産主義的である、ということはティールが初めて言い出したことではない。ディストピアという文脈で同じような議論はあった。

大事なのは、それが「いつかくるどこかの未来」ではなくて、極めて現実的な話としてトランプ政権の中で議論されているであろう、ということ。何かしら具体的なアクションが近いうちに現れるだろう。

私が関心を持っているのは、中央集権的なAIではなく、社会参加型のAI(Society in the loop)*2だ。未来に選択肢があるよう、できることをやっていきたい。

*1:この記事の本題ではないが、ブロックチェーンによって分散されるものとされないものがある。セキュリティという観点から、その境界線について書かれた貴重な記事。Satoshiが注意深く設定した世界の境界線 – Shin'ichiro Matsuo – Medium

*2:伊藤穰一さんが2年ほど前から提唱している。MITメディアラボ所長 伊藤穰一が考える「社会参加型人工知能 」 | ワールド | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト