太田直樹のブログ - 日々是好日

テクノロジーが社会を変える

それはHYPEなのか、それともHOPEなのか

教育システムはどうなるのか、というテーマでThe Two Loopsについて書いた*1。これについて、いま、いろんな人と話をしている。そして、近い将来に、根深い対立があるかもしれないと感じている。例として、米国のチャータースクールのひとつ、Rocketship Educationについて取り上げてみたい。二つの説明をしてみよう。

Rocketship Educationは、教育格差をなくすことに挑戦するNPOとして2006年に設立された。最初の学校はサンノゼに建てられ、ITを活用した個別教育と教育困難地域を支援するTeach for Americaとのパートナーシップによって、家が貧しい子供たちでも、地域トップレベルの成績を達成するようになった。ゲイツ財団やフェイスブックなどの支援もあり、カルフォリニア州から、ウィスコンシン州やテネシー州、ワシントンDCに広がり、今では15000人の子供たちが学んでいる。

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photo by Randi Lynn Beach/ For the Washington Post

どうだろうか。ではふたつめ*2

Rocketship Educationは、コンピューターを使ったラー二ングラボによる「個別指導」が特徴だ。学校は正規教員を減らし、替わりに時給15ドルの無免許のインストラクターが、最大130人の生徒をモニターする。学校はそれによって、年間約50万ドルを節約できるという。教員の75%は、5週間のトレーニングで非正規教員免許を得られるTeach for Americaのプログラム出身者だ。理事やアドバイザーには、ゲイツ、ウォルトン、ブロードの各財団が並び、フェイスブックやスカイプなどのIT企業も支援している。

どちらも本当のことを言っているように思う。いま、いろいろな教育のモデルが出ているが、どれを取り上げても同じように、かなり異なるストーリーが書けるのではないか。とにかく、先進(と言われる)地域に視察に行って、やれSTEMだPBLだ、などと叫ぶことは自戒したい。

必要なことのひとつは、垣根を超えた対話だろう。そういった場を主催しているFutureEdu Tokyoの竹村詠美さんは、Most Likely to Succeedという映画の上映会を去年始めた。もう500人、子を持つ親、教師、学生、IT企業などが観て、対話をしている。

www.futureedu.tokyo

この映画は、異なる意見、新しい学びへの困惑や不安などをバランスよく撮っていると思う。今後も上映会は続く予定だ。

改めて、いまが大事な時期だと思うのは、システムチェンジには10年、20年かかるけれど、テクノロジーが仕事や暮らしを劇的に変えるスピードが加速していることだ。

春ごろに、The Two Loopsのワークショップをやる準備をしている。未来の地図は描けなくても、何か羅針盤になる手がかりが見いだせればと期待している。

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二つのループを床において、いま起こっていることを探求。©️home's vi




*1:「教育改革」のゆくえ - 太田直樹のブログ - 日々是好日

*2:この本を参考にさせていただいた。『崩壊するアメリカの公教育』鈴木大裕著、岩波出版。市場原理とグローバル標準を推し進める新自由主義に警鐘を鳴らしている。