太田直樹のブログ - 日々是好日

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3分で分かる「官民データ活用推進計画」

10月10日に地方公共団体向けの「官民データ活用推進計画策定の手引」が公表された。都道府県版が45ページ、市町村版が59ページ。例によって、決して分かりやすいとは言えない。「データは21世紀の石油」というほど大事なのに、何とかならないだろうか。ということで、個人的な解説をしたい。

大きな流れ(主に企業やNPOの方向け)

(あたり前のことなんだけれど)政府や地方自治体は、法律に基づいて仕事をしている。ITが仕事になったのは、2000年にさかのぼる。この年の11月にIT基本法が成立し、翌年1月にIT戦略本部が設置され、e-Japan戦略が決定された。まだ日本が「ITで敗戦」する前のことだ。

その後、日本のITは「ガラパゴス化」など苦戦する中で、2014年にサイバーセキュリティ基本法が成立。2010年あたりから、欧米ではビッグデータや第4次産業革命の動きが活発化したが、日本では13年のSuicaデータの活用を巡る事案*1に代表されるように、差は開く一方。

データ利活用の道を拓くべく、15年9月に改正個人情報保護法が成立した。施行が17年5月ということから困難さが垣間見えるが、「改正したけど、やっぱり”保護法”なんだよね」ということで、データ利活用を推進するために作られたのが、官民データ活用推進基本法だ。

ちなみに、この20年弱の間に、経済政策における国(+自治体)の役割は、牽引車ではなく、規制緩和やグレーゾーン解消などの後方支援にシフトしていく。

計画を作る意味(基本編)

国や自治体が、計画して実行することは、基本法に明記されている。1)行政手続のオンライン化(第10条)、2)オープンデータの促進(第11条)、3)マイナンバーカードの普及(第13条)、4)デジタルデバイド対策(第14条)、5−1)情報システム改革・業務の見直し、5−2)プラットフォームの活用(第15条)の大きく5つだ。

注目される*2のは、2)について、オープンデータ活用自治体を現在の15%から2020年に100%にすること、5)について2020年までに800の取り組みを作る*3こと、が明記されていることだろう。

また、重点分野として、電子行政、健康・医療・介護、観光、農林水産、ものづくり、金融、防災・減災、移動の8分野が、5月末に公表された国の基本計画に明記されている。

ただ、国の計画(89ページ)が読みにくいのは、「やること」と「重点分野」が掛け算で記載されていて、正直に言えば冗長だから。なので、お勧めは、90ページ以降の「索引」を見ること。これを見れば、IT関連でどの施策が動いているか、一目瞭然だ。各省庁が公表する無数の資料を読まなくても、大事なものはここに全部ある。計画を作る基本的な意味は、これらの施策をもれなく使い倒すこと、にある。

計画を作る意味(応用編)

繰り返しになるが、日本はデータ活用で遅れている。この計画の策定によって、突破口が開ける可能性があるポイントが2つある。

まず大きなところで言えば、PDS(Personal Data Store)。これによって、個人情報について、個人が管理して活用・移動・消去する領域が広がる。これは第12条に記されている。喧々諤々の議論があったが、現時点では、民間主導のルールが整備される方向だ。それをいち早く実装するために、都道府県や市町村の計画の目玉にできないか。

次に、日本だけでなくグローバルでデータ利活用が遅れている(したがってチャンスが大きい)ヘルスケアと教育の分野。重点領域に、健康・医療・介護がある。また、教育については、読み込めば、国の計画の第15条関連に「クラウド活用」や「校務系クラウドと学習系クラウドの連携」が明記されている。これらは、長年進みが遅かった領域であり、この計画を活用して、一気にコトを進める地域が出てくることを期待したい。

 

*1:プライバシーについて、以前少し書いたものをご参照。「プライバシー」というのも過去の風変わりな表現になる(のかな) - 太田直樹のブログ - 日々是好日

*2:逆に、課題がありそうなのは、電子政府やマイナンバーだろう。これらは単に計画を作れば進むという気がしないが、また別の機会に触れてみたい。

*3:これを担う場のひとつが7月に設立された「地域IoT官民ネット」だ。同じところを見てるんやなあ、ローカルXテクノロジー - 太田直樹のブログ - 日々是好日