太田直樹のブログ - 日々是好日

テクノロジーが社会を変える

ものづくり企業の未来

更新が滞っており、各方面からお叱りを受けている。忙しいのかといえばそうなのだけれど、不眠不休で働いているかといえば4時間は寝ているし、娘の影響で「はがれん(鋼の錬金術師)」を大人買いして悦に入ったりしている。

ただ、古傷の膝を痛めてしまい、歩くのが多少難儀なのには閉口している。「太田さん、ついに痛風発症ですか」とにっこり問われたりすると、(内心)さらに閉口する。医師から「老化もあるなあ」と言われたのにトドメを刺された。なんとか手術なしで(右膝は手術している)済ませたいものだ。

さいきん二つ講演をした。ひとつは以前にも書いた日経BPの「ものづくりフォーラム」の基調講演。もうひとつはあるメーカーの役員合宿だ。どちらもテーマは、これからのものづくり企業の戦略である。

BCGでは米ビジネスウィーク誌と共同で、イノベーションについての調査を毎年行っているが、そこで悩ましい結果がでている。商品のイノベーションからのリターンが縮小しているのだ。「コモディティ化」と言ってもいいかもしれない。この言葉は最近の企業ではすっかり日本語として定着してしまった。

しかしグローバル化と同じく、このコモディティ化という便利な言葉は思考を停止させる面もある。コモディティとは、品質や機能が変わらず、自由に交易・代替できるということで、簡単な例でいえば塩なんかが挙げられる。

デジタルTVは「コモディティ化」の被害者の極北として語られることが多いが、上の定義に照らし合わせてみると、まず塩と違って新興国には行き渡っていない点がすぐ指摘できる。いわゆる「ボリュームゾーン」、BCG用語でいえば「ネクストビリオン」という未開拓市場の存在がある。

そして先進国でも、ユーザーは大変満足して買っているかというとそうではなくて、さまざまな不満がある。機能を使いこなせない、買ったらすぐに値下がりする、リサイクルが面倒などなど。ここにビジネスモデル改革のチャンスがひそんでいる。産業財でも同じことが言える。

ただ、実際にこれらの戦略を企業において実行に移すことは大変な困難を伴う。端的に言えば、日本企業における成功例がほとんどないのだ。身近なところに先例のないことを検討するのが、日本企業は大変に苦手である。あるいはそこまでまだ追い込まれていないという見方もできる。

ちょっと変わったリーダーとミドルの組み合わせが理想的だと思っている。あるいは誰もやったことがないからちょっとやってみようかという好奇心と勇気。そんなものが必要だろう。講演ではそんな気持ちでお話をさせていただいた。