太田直樹のブログ - 日々是好日

テクノロジーが社会を変える

Googleフォンをちょっと考えてみる

WSJにグーグル・フォンの記事が出たと紹介されています(下の記事)。ポイントになりそうなところを少し考えてみたいと思います。

Googleが携帯電話を計画」,米紙報道
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20070803/279045/

ポイント1:「差別化するなら10倍」

先日、新製品が既存製品を代替する際には10倍の差別化が必要だというHBSのグルビル教授の論文を紹介しました。
http://blog.goo.ne.jp/kozatori7/e/c5df24a8f803a9bcee2131afa66df4fc

先の米紙報道によればグーグルが考えている携帯電話は「iPhoneのような革命的なものではない」ということです。これは戦略的に意味がありそうです。なぜなら、「10倍の法則」が説くのは、中途半端な差別化が失敗するということであり、10倍差別化するか、さもなければ代替を感じさせないという作戦を検討することになります。

そう考えると、どうせ携帯電話は買い換える訳ですから、今使っている携帯電話がちょっと便利になってそれがグーグル・フォンというのは理にかなっていると思います。そういう意味では、ATTしか契約できないiPhoneと違って、複数の事業者が選択できるというのも理にかなっていると言えます。

「テーラーメード」というのも、実現できれば、ユーザーの心をくすぐり、スイッチングを促す効果がありそうです。

ポイント2:無料にできるのか?

まず何を無料にするかですね。携帯端末なのか、通話料なのか、両方なのか。単純に考えて、日本の広告市場と携帯電話市場を比べてみましょう。前者は6兆円弱。後者は10兆円を超えますから、比較するとグーグルが広告市場を全て押さえたとしても(そんなことはあり得ませんが)広告費で「今の」携帯電話市場を全て無料にすることは難しそうです。

でも、端末や通信のコスト構造をグーグルが変えるところまでやるとすると話は変わってきます。端末の方は、あまり低コスト化をやるとユーザーが受け入れないでしょうから、少しハードルが高いでしょう(でもいつまでもガラパゴス諸島ではいられないでしょうね)。しかし、通話の方は無線LANをうまく使えば大きくコストを下げる余地があるかもしれません。

ポイント3:グーグル・フォンの売りは?

ポイント2とつながるのですが、インターネットでは検索サービスを磨きこみ、その結果としての「有用な情報の提供」が広告費を生むというのがグーグルのモデルです。だとすると、ケータイでは「有用な情報」としてグーグルが提供できるのはどのようなものか、ということになります。

位置情報を使った検索が候補として考えられます。いまでも、NTTドコモの「iエリア」のような位置情報を使ったサービスがあります。ただし、iエリアを使うと分かりますが、メニューに表示されるのは例えば新橋エリアの「ぐるナビ」ですので、そこからあれやこれやと探さないと目的の情報には辿り付けません。

一方、インターネットのグーグルマップはカスタマイズできますから、位置情報から自分が求める情報にもっと容易に辿り付けます。たとえばわたしの場合は、行く先々でラーメン屋を押さえておく必要がありますから、グーグルマップにはラーメン情報をカスタマイズして加えています。

ただ、ケータイでどのようにナビゲーションするのかは、パソコンとはきっと違ったインターフェースやアプリケーションが行われるでしょうから、いまから楽しみです。すごくシンプルで「革新的」には見えないのだけれど、日々手放せないサービスになっている。そんなものが出てくると、グーグルは既存の携帯電話事業者にとって、とても脅威となると思います。