太田直樹のブログ - 日々是好日

テクノロジーが社会を変える

日本発のICTビジネスモデル

先週から今週にかけては、私が専門とする情報通信分野で様々な動きがありました。それぞれについて、いろいろ突っ込んで議論できるポイントはあるのですが、ざっとまとめると以下のようなところです。

総務大臣の「ICT改革促進プログラム」
http://it.nikkei.co.jp/internet/news/index.aspx?n=MMIT12000023042007

いっとき(2、3年前)日本はブロードバンド&モバイル先進国ということで盛り上がりましたが、その後ICT(情報通信技術)の国際競争力がどんどん下がってきていると強い危機意識が背景にあるようです。

仕事柄、様々な立場の方と議論する機会があるのですが、何人かのいわゆる「識者」の方から聞こえてくるのは、「全体像が見えにくくなっている」ということと、「分かり易い標的(例えば、NTTやNHK)を叩いて、本当に日本発の強い企業やモデルが生まれるのか」という2点でしょうか。

これらの点については、精緻な議論がもちろん必要ですが、私は前者に関連して「見通しが悪くなる中で、リスクをどのようにとるのか」ということがポイントになると思います。今回の議論で言えば、ユビキタスにせよ、モバイルにせよ、何が成功するのかが見えにくくなっている。そのリスクをどうとるのかということです。

30年前であれば、当時の通産省主導の「大プロ」のように国家予算を突っ込んでリスクをとる、という方法がありました。現在では、例えば経産省主導の検索エンジンのプロジェクトに46億円の予算が割り当てられています。しかし、同じようなプロジェクトに、例えばフランスでは約10倍の予算を組んでいます。プロジェクトが大きければいいと言うわけではないでしょうが、このアプローチだけではなかなか心もとないですね。

そんな中、NTTドコモから「DoCoMo 2.0」なる戦略の発表がなされています。
http://review.japan.zdnet.com/news/c20347697.html

名前から察するに、Web2.0に引っ掛けた新世代のサービスという意気込みでしょうか。KDDIは、米国のクワルコム(携帯関連の特許を多数押さえていることで知られています)に技術を依存していますので、今回新しい世界を提示しようとしているドコモとYahoo!BBを擁するソフトバンクが、ネットワークとコンテンツが融合・連携した日本発の新しいモデルを生み出す可能性がありそうですね。

しかし、英Financial Timesに、最近、携帯事業者に対して厳しい意見が載せられています。英文の記事ですが、最近のモバイルをめぐるオープン化の動きがコンパクトにまとめられているので一読の価値ありです。
http://www.ft.com/cms/s/83dbbad2-ecfd-11db-9520-000b5df10621.html

記事の要点は、固定通信と同じように、携帯も付加価値のあまりない「土管化」の運命を辿るのではないか。それに対抗する戦略はリスクが高く、なかなか投資家に受け入れられないだろう、というものです。

ここで、はじめの菅大臣の改革案に戻るのですが、リスクをとって新しいものを生み出す環境について、ぜひクリエイティブな案を考えていただきたいものです。