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日々是好日

テクノロジーが社会を変える

日本で「信頼社会」は生まれるか?


ちょっと風邪でダウンしてしまって間が空いたのですが、ダニエル・ピンクの「フリーエージェント」のつながりで、「信頼」について考えるために手に取ったのが本書です。どこかの雑誌か新聞で、山岸さんの主張のいくつかは知っていたのですが、今回、きちんと読んで理解が深まりました。

筆者の主張はつまるところ以下の点にあるかと思います。
�@「安心」と「信頼」は異なる。前者は、相手が裏切らないという不確実性が小さい中で成り立つ(昔の「村八分」などは典型)もので、後者は不確実な状況で相手の意図に期待を持つこと。日本がいま直面しているのは、「信頼崩壊」ではなく「安心崩壊」である。終身雇用の終焉などがその例。関連して、一般に日本の方が米国より「信頼」が高く「集団主義」と言われるが、心理実験によれば常識とは逆に、米国人の方が相手をより「信頼する」。これは日本が安心ベースの社会である証左である。
�A社会がどちらのモデルを基盤とするかは、社会の構造が大きく作用する。すなわち、安心ベースの社会は、決まった(すなわち裏切らない)相手と付き合うことで「取引コスト」を下げる。それが、知らない相手から得られるかもしれない利益(=機会コスト)より小さければ、社会としては効率がいい。逆に信頼ベースの社会は、機会コストを下げるためにオープンな中で関係を構築していく。いまの日本では、機会コストが取引コストを上回る状況になっているのではないか、という問題提起。
�B高信頼者がどういう人かというと、一般には「信じるものはだまされる(人を見たら泥棒と思え)」という「常識」があるが、これも違う。高信頼の人は、高い社会的知性を持っており、不確実な状況の中では、低信頼者より他人の信頼度を確実に見抜き、結果として高い利益を得ることができる。
�C信頼を高めていくにはどうするかというと、二つのアプローチがある。まずは、個々人が、相手の立場に身をおいて相手の行動を推測する「ヘッドライト型知性」を獲得すると共に、社会として透明性を高めて不確実性を減じていくことが必要。

ちょっと息切れしてしまいましたが、こんな感じでしょうか。
突き詰めると「正直でいることが、不確実な世の中ではいちばん得である」
ということですね。

しかしそのためには社会的知性が必要で、残念ながら日本人はこれが低い・・・。
著者の前書きにあるたとえを借りると「山深い小さな村から急に江戸や大阪といった大都会に出てきた農民の直面する状況」というのが今の日本なのでしょうか。

そうなると、ダニエル・ピンクの描く個々人が信頼をベースに仕事をする、フリーエージェントなどは別世界のお話になってしまいますね。そこで、日本ではどのような解がありうるのか、今後方向性を探ってみたいと思います。