ETICの井上さんに会いに行く
前からお会いしたいと思っていたETIC(Entrepreneurial Training for Innovative Communities)の井上さんに会いに行きました。日本の社会イノベーションにおけるキーマンの一人で、ISLのビジョンをブレストさせていただいたのですが、柔和な表情ながら、眼力のとても強い人で、圧倒的な刺激を受けました。
ETICのHP
http://www.etic.or.jp/index.php
まず、以前から何となく感覚として持っており、年末から少しずつ勉強していた「ビジネス=社会」という大きな時代のうねりを、はっきりと肌で感じることができたのは、私にとって大きな収穫でした。
そして、思ったのは、社会イノベーションの進んだ米国と異なり、日本でやるなら、「社会」や「リーダー」を意識しないことがゴールになるのではないかということです。
井上さんによると、米国のアプローチは、ピラミッドの頂点にスターを作り、それをロールモデルとして全体を変えていくモデルです。この分野の代表的なNPOのAshokaや、e-Bayの創業者が創ったスコール財団は、社会イノベーションのスターづくりにフォーカスしています。
しかし、日本では米国のようなIT長者が創設するベンチャーフィランソロフィーなど考えにくいですし、その背景となる「Leverage(梃子)」あるいは、大前研一氏のいう「マルチプル(倍数)」という考え方は、限られた人数の巨人とその他大勢の普通の人という社会構造です。
社会主義的な悪平等がいいと、考えているわけではありません。私は、日本には、ごく普通の人達が、きちんと日々働き、それが社会をよくすることにつながる、そのような良さを持っていると思うのです。それがきちんとできれば、「マルチプル」みたいな目に見えないものに頼らなくても、きちんと中身がある社会になるでしょう。
ただ、今の日本では、90年以降、「生きること」と「働くこと」は、もはや一致しなくなっています。また、気がつけば「小泉劇場」の観客席に座っている私たちは、「生きること」と「社会」も分離したままです。
この混迷の時代に先にある新しい社会のかたちは、
「一人ひとりが日々生きること=働くこと=社会をよくすること=格好いい」
というものになっているはずです。