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太田直樹のブログ - 日々是好日

テクノロジーが社会を変える

日本人にとっての社会イノベーションとは?

ISLがシュワブ財団と提携してSocial Entrepreneur of the Year(略称SEOY)の記念すべき第一回を開催することとなった。まずは伊藤さん、向谷さんをはじめ、このような快挙を成し遂げたISL事務局スタッフの熱意と行動力に敬意を表したい。

多数の応募者の中からファイナリストとして表彰式に参加されたのは、この5名の方だ。
 石川 治江氏(ケア・センターやわらぎ)
 駒崎 弘樹氏(フローレンス)
 鈴木 亨氏(北海道グリーンファンド)
 チャールズ・マクジルトン氏(セカンドハーベスト・ジャパン)
 枋迫 篤昌氏(マイクロファイナンス・インターナショナル・コーポレーション)

ここに至るまでに、やはりISLなんで延々と議論があり、私もその一部に参加したが、大きな論点のひとつは「受賞者の選定基準」だった。欧米に比べてNPONGOが未成熟な日本で、ビジネスを基盤とするISLが共同開催するアワードをどう位置づけるか。いつものごとく喧々諤々の議論があった。

私自身は、若干消化不良という形だったのだが、式典のゲストスピーカーである、KIVA(P2Pファイナンスの成功モデルを築いた)のマット・フラナリー氏のスピーチを聞いていて「!」と思った一節があった。

Social innovation is a half baked product. I hope Japanese entrepreneurs will improve and export it

確かこんな感じだったかと思う。何が自分の中でストンと落ちたかといえば、社会起業家が珍しくない社会が目指す姿だとすれば、誰も考えつかなかったことを始めることだけではなくて、既にある生煮えのものを完成させていくのも大きな貢献なんだよなあということ。

今年の受賞は、枋迫氏だった。マクロファイナンス自体は、グラミン銀行の創設者であるユヌス氏のアイデアだ。しかし、それを淡々と大きなスケールで、米国を舞台に進化させたのは素晴らしいことだと思う。

もうひとつ、印象に残った言葉は、シュワブ財団の共同創立者のHilde Schwabさんのこの言葉だ。

Everything is connected. Japan can not be an isolated rich country

「日本は課題先進国」なんてよく言われるが、世界(あるいは欧米)から見ると、やはり遠くのお金持ちの国と見えるんだよなあ、と改めて思った。でもそれも長くは続かないという健全な危機意識のもと、日本人として一人ひとりがどう行動するかが今、問われている。また、日本の企業にとっても、単なる広報的なCSRではなく、事業の中で社会ニーズに取り組んで行く重要性が今後高まってくるだろう。

ものづくり企業の未来

更新が滞っており、各方面からお叱りを受けている。忙しいのかといえばそうなのだけれど、不眠不休で働いているかといえば4時間は寝ているし、娘の影響で「はがれん(鋼の錬金術師)」を大人買いして悦に入ったりしている。

ただ、古傷の膝を痛めてしまい、歩くのが多少難儀なのには閉口している。「太田さん、ついに痛風発症ですか」とにっこり問われたりすると、(内心)さらに閉口する。医師から「老化もあるなあ」と言われたのにトドメを刺された。なんとか手術なしで(右膝は手術している)済ませたいものだ。

さいきん二つ講演をした。ひとつは以前にも書いた日経BPの「ものづくりフォーラム」の基調講演。もうひとつはあるメーカーの役員合宿だ。どちらもテーマは、これからのものづくり企業の戦略である。

BCGでは米ビジネスウィーク誌と共同で、イノベーションについての調査を毎年行っているが、そこで悩ましい結果がでている。商品のイノベーションからのリターンが縮小しているのだ。「コモディティ化」と言ってもいいかもしれない。この言葉は最近の企業ではすっかり日本語として定着してしまった。

しかしグローバル化と同じく、このコモディティ化という便利な言葉は思考を停止させる面もある。コモディティとは、品質や機能が変わらず、自由に交易・代替できるということで、簡単な例でいえば塩なんかが挙げられる。

デジタルTVは「コモディティ化」の被害者の極北として語られることが多いが、上の定義に照らし合わせてみると、まず塩と違って新興国には行き渡っていない点がすぐ指摘できる。いわゆる「ボリュームゾーン」、BCG用語でいえば「ネクストビリオン」という未開拓市場の存在がある。

そして先進国でも、ユーザーは大変満足して買っているかというとそうではなくて、さまざまな不満がある。機能を使いこなせない、買ったらすぐに値下がりする、リサイクルが面倒などなど。ここにビジネスモデル改革のチャンスがひそんでいる。産業財でも同じことが言える。

ただ、実際にこれらの戦略を企業において実行に移すことは大変な困難を伴う。端的に言えば、日本企業における成功例がほとんどないのだ。身近なところに先例のないことを検討するのが、日本企業は大変に苦手である。あるいはそこまでまだ追い込まれていないという見方もできる。

ちょっと変わったリーダーとミドルの組み合わせが理想的だと思っている。あるいは誰もやったことがないからちょっとやってみようかという好奇心と勇気。そんなものが必要だろう。講演ではそんな気持ちでお話をさせていただいた。

脱ガラパゴス化 〜 インドの未来

日経BPさんが主催されるセミナーで基調講演をさせていただくことになった。大勢の人前で話すのは昔から平気なのだが、決して話上手な訳ではない。なかでも、このようなオープンセミナーは、聴衆のバックグラウンドがさまざまで、ビジネススクールの講義などに比べると、正直やりにくい。それでも、最近の製造業の現場で起こっていること、そしてこの景気後退の中でどのような方向に活路を見出しうるのかについて、思うところを話してみたい。

ものづくりフォーラム2009のHP
http://ac.nikkeibp.co.jp/nmc/forum0907bs/


ああ、講演の準備をしなきゃなあと思いながらぼんやりしていると、面白いスピーチを見つけた。インドを代表するIT企業、Infosysの創業者、Nandan Nilekani氏が、インドの未来について、今年の2月にカルフォルニアで行ったものだ。

まず仕立てに魅了された。冒頭、アイデアが未来を作るとズバっとやって、アイデアには4つの段階があると説明する。それらは
・Ideas that has arrived (すでに実行されたアイデア
・Ideas in progress (いま実行中のアイデア
・Ideas in conflict (議論が必要なアイデア
・Ideas in anticipation (未来のアイデア
の4つに分類されると言う。

Nandan Nilekani's ideas for India's future


15分の短いスピーチだが、パワーに溢れていて、聴いていて元気がでてくる。内容はこの映像を見てもらうこととして、スピーチの仕方としては、いいスピーチはいつもそうだが、パワーポイントはあくまでも添え物で、数字を効果的に使っている。ちなみに、日本のセミナーは演者一人一人の時間が長すぎるといつも思う。

最後の締めくくりも力強い。なぜこの話がインドから遠く離れたアメリカの聴衆に関係あるのかをNilekani氏は述べる。まず第1に10億人を超える国だということ。世界の人口の6分の1をインドが占める。そして、それが民主主義の国の話であるということ。最後に、先進国の何倍もの速さで、その国の近代化が起こるといこと。環境、エネルギーなどいろんな面での課題の解決に世界が協力してあたらなくてはならない。

Nilekani氏のスピーチは言葉だけではない。彼はInfosysの会長の座をなげうって、インド政府でIT化のプロジェクトのリーダーに就いて勢力的に活動している。BCGがパートナーとしてサポートしている国連WFPも、このプロジェクトに参加している。Nilekani氏は、私より一回り歳が上だが、いつか直接お会いしてみたいと思っている。

What they teach you at Harvard Business School

Pod Castで愛聴している番組のひとつに、BBCの"Peter Day's Business Worldがある。その中で、タイムリーなトピックで話題になっている本、What they teach you at Harvard Business Schoolの著者へのインタビューが面白かった。

実はこの本は未読なのだが、インタビューを聞いてると、アメリカのパワーリーダー、ゴールドマンサックス、GE、大統領、世界銀行の頭取などを輩出しているHBSの意義について問いかける本らしい。

この本はアメリカでは上の題ではなく、"Ahead of the curve"というタイトルで販売されている。HBSはクラス内での過酷な競争で知られているが、最初の方の授業で「君たちはもしかすると試験でビリになるかもしれないが、それでも世の中から見るとベルカーブ(正規分布)の右端にいるエリートなんだ」と言われるらしい。Ahead of the curveの所以だ。

しかし、著者のPhilipはこう言う。"Comparison is the death of hapiness (人と比べた途端に幸せを感じなくなる)"。エリートとしての競争って何の意味があるの、という訳だ。資本主義に対して疑問が呈されている中、これは意義深い問題提起だと思う。

そういった中、私なりの著者の主張の理解はこうだ。HBSは実務家を育成するには「数字」に偏りすぎている。数字が真実を欺くのは、今回の金融危機、少し古くはエンロンなどを見れば明らかだろう。また、世界を変えるリーダーを育てるには、「競争」に毒されすぎている。本来は自分の中に「Principle(原則)」をもつべきだ。

ふと、最近お会いした叩き上げの在阪企業の社長とのやりとりを思い出した。世界的な経済危機の中どのような経営をしていくのか、というような話だったのだが、「私はあんまり数字を信用していませんねん。しかし、何度も景気があがったりさがったりするのを経験して、世の中がこう動いているという考えはもってます」と、独自の見方をお話いただいた。

興味深かったのは、ある新事業についての構想をお話しされていたときのこと、ある大手企業の成功した商品ことをとりあげて、「何か腹がたちますやろ」とおっしゃった。もちろん、半分は照れ隠しで、ここにもその社長なりの生活者に対しての思いがあるのだが、こんな反骨精神から面白い商品や事業は生まれるのだな、と思った。

私がお手伝いしているISLの経営者ゼミは、今年は多様な顔ぶれで、いろんな視点から議論が深まっている。来週で最終セッションを迎えるが、独自の世界観やプリンシプルと出会えるといいな、と思っている。

Be aware of a next explosion of the Internet


BBCをpod castで聞いていて、久しぶりにびっくりするニュースに出くわした。「インターネットの父」と言われるVint Cerf氏へのインタビューだ。最初は落ち着いた調子で質問していたBBCのキャスターが、Cerf氏の話が進むにつれ、思わず噛みながら「Let..Let me get this right....(ちょっ、ちょっと確認してもいいでしょうか・・・)と何度も問い直していたのには笑ってしまった。

Cerf氏は70年代にインターネットプロトコルであるTCP/IPを開発したコンピュータ学者だが、現在はChief Internet EvangelstというタイトルでGoogleに身をおいている。

氏によると、現在のインターネットユーザーは17億人。加えて、モバイルユーザーの20%、約7億人にネットアクセスがあるとして、最大24億人、重複を考えると約20億人がつながっているという。

衝撃の未来像は、今後3年から4年の間に、ネットアクセスは世界人口の75%、約50億人に達するというもの。そしてそれは携帯電話によってなされるという。

Cerf氏曰く、そこ(75%の普及率)までは比較的自信があるが、そこから先は分からないね。TVなどの技術を見ていても、最後の20%は大変だろう、とサラリとおっしゃっている。

数年の間に30億人のネットユーザーが出現する・・・これは劇的な変化だ。しかし、ホンマかいな?という向きもあるだろう。ただ、先日もインドに行って感じたが、農村でも携帯ネットが生活の中ですでに浸透しつつある、以前も書いたがインテルがアフリカもターゲットに、安価な無線LANベースのテクノロジーの開発に邁進している・・・

インテルのスケールとスピード
http://blog.goo.ne.jp/kozatori7/e/688a1fc17dd6c9cf8c23afdcc04f3928

・・・ひょっとしたら、あるかもしれん。

更に興味深いのは、Cerf氏が単なる技術的な可能性から上のビジョンを言っているのではないということだ。インターネットの爆発的な普及によって、例えば、電力監視システム(これもGoogleの新規事業の一つやね)のようにエネルギー問題、特に新興国でのそれを解決する、という社会的なインパクトを見据えている。

さて翻って、日本企業だ。問われるのは、関連企業のリーダーの先見性だろう。いま、Affodable Technology(手ごろな技術)というのが海外ではホットなキーワードになっているが、これまで進んだ技術を目指してきた開発部隊の方向を変えるのは、トップダウンしかない。GEは医療、電力など幅広い分野でこれをやってのけている。日本企業にはできるだろうか・・・

もう「日本はガラパゴスだし・・・」「そんなローコストの商品をやったって利益はでるのか」なんて言ってみても仕方がないところに事態はきつつあるようだ。世界経済が嵐の中で激動する一方、来るべき新しい秩序への動きがはじまっている。

ウィーンでラーメン


1ヵ月ぶりのブログが「ラーメンかよっ」である。ここのところ何となく鬱々としていて珍しく妻に「最近あまり寝れなくて・・・」なんぞ言ってみたら「あら、グースカ寝てるわよ」と返り討ちに合う・・・言わなければよかった。若い頃のように、ある一瞬は世界でも無敵だと思ったら次の瞬間にどん底に落ちるようなそんな激しいものではなく、ただただどんよりとしている。中年期というのもそれなりにやっかいだ。

その間クライアントとの会食で元気をいただいた。ありがたくて深夜家に帰ると涙がでそうになる。寝ながら中年の癒しの歌姫と最近諸兄姉に評判の阿部芙蓉美の曲をぢっと聴く。いい声だ。歌詞もいい。

http://www.abefuyumi.com/home/

BCGのパートナーミーティングで豚インフル騒動の中ウィーンに来ている。地図を片手にさっそく街を歩く。この都市には初めてくる。さすが欧州貴族の極北ハブスブルク家が治めていただけあって重厚な街だ。まだ膝が本調子ではないのだけれど小一時間ほどテクテク歩いて食林閣という中華料理屋さんに着く。ウィーンにはラーメン専門のほのぼの亭という店があるのだがあいにく日曜は休みだった。

注文したのはNoodels in soup with chikenとビール。出てきたのは写真の如く揚げたチキンが乗せられた一品。少し重いかなと思ったがスープがあっさりしていてなかなか美味だ。ビールがよく合う。店の奥で日本人駐在の家族が複数宴会をしている。隣では地元の女性が堅焼きソバをおいしそうに食べている。

すっかりいい心持ちになってまたテクテクと帰途につく。この街はけっこう自転車で移動している人が多い。主要な道路にはだいたい自転車専用のレーンがある。街路樹が立派でその中を走るのは気持ちがよさそうだ。レンタサイクルでもしてみようかしらんなぞと思う。

部屋に戻ってミニバーからRed BullリポビタンDみたいなやつですな)をグビっと飲む。少し元気がでてきた(気がする)。

念願のnanoに乗った


何だかよく分からない「つけ麺」を腹に納めて、予めホテルで調べてもらっていたnanoのショールームに向う。インドではSMS(ショートメール)が発達している。滞在中、運転手付きのレンタカーを雇っていたのだが、予約状況や車の場所などがいちいち私の携帯にメールされる。また、ホテルでnanoについて聞くと、フロントの男性がTATA(nanoを作っている自動車メーカー)に電話した。するとすぐにSMSが飛んできて、男性はタッチペンですばやく目指す情報を探し出すと、PCのキーボードを叩いて地図で場所を出してくれた。ケータイとPCがうまく融合された使い方だ。

目指すnanoのショールームは、クロスチャーチという大きな鉄道の駅の近くにあるはずだが、なかなか見つからない。膝はだんだん痛くなってくるし、したたり落ちる汗が目に入って痛い。うろうろしていると、まさかというところにnanoはあった。

見つからないはずだ。TATAの金融サービスの小さな店の一角に陳列されている。さっそく中に入ると、店員が寄ってきてあれこれ説明してくれる。中に入って運転席に座ってみる。私は車を全く運転しないのだが、思ったより天井が高く、足のスペースもゆったりしてる。エアコンも標準装備とのこと。後部座席にも座ってみた。大人3名が何とか座れそうなスペースだ。

外にでると、前のボンネットを開けてくれた。そこにガソリンタンクがあり、給油は前で行う。インドらしくスペアのタイヤも納められている。二気筒のエンジンは後部にある。私は車づくりには素人だが、それでもこれだけの車を30万円で売り出すのは革新的だと、実物をみてつくづく思った。

もうひとつ面白いのは販売方法だ。ここもそうだが、nanoの陳列スペースは驚くほど小さい。写真のように、ノベルティやアクセサリーをコンパクトに陳列する棚があって、可動式になっている。BCGのムンバイ事務所のパートナーに聞いた話では、ショッピングセンターのエスカレーターの脇なんかにも、ゲリラ的にディスプレイするらしい。売り方も新しい。



店を後に歩きだしながら、昨日、インドのあるハイテク企業の幹部がいった言葉を思い出していた。「日本企業は資本も技術もあるけれど、新興国ではまだまだだよね。富裕層向けの高いものしか作らないだろう。でも、この(中間層の)大きな市場は、見逃すには惜しいと思わないか。」

まったく同感だ。しかしそれにはイノベーションと熱い思いが必要だ。