太田直樹のブログ - 日々是好日

テクノロジーが社会を変える

脱ガラパゴス化 〜 インドの未来

日経BPさんが主催されるセミナーで基調講演をさせていただくことになった。大勢の人前で話すのは昔から平気なのだが、決して話上手な訳ではない。なかでも、このようなオープンセミナーは、聴衆のバックグラウンドがさまざまで、ビジネススクールの講義などに比べると、正直やりにくい。それでも、最近の製造業の現場で起こっていること、そしてこの景気後退の中でどのような方向に活路を見出しうるのかについて、思うところを話してみたい。

ものづくりフォーラム2009のHP
http://ac.nikkeibp.co.jp/nmc/forum0907bs/


ああ、講演の準備をしなきゃなあと思いながらぼんやりしていると、面白いスピーチを見つけた。インドを代表するIT企業、Infosysの創業者、Nandan Nilekani氏が、インドの未来について、今年の2月にカルフォルニアで行ったものだ。

まず仕立てに魅了された。冒頭、アイデアが未来を作るとズバっとやって、アイデアには4つの段階があると説明する。それらは
・Ideas that has arrived (すでに実行されたアイデア
・Ideas in progress (いま実行中のアイデア
・Ideas in conflict (議論が必要なアイデア
・Ideas in anticipation (未来のアイデア
の4つに分類されると言う。

Nandan Nilekani's ideas for India's future


15分の短いスピーチだが、パワーに溢れていて、聴いていて元気がでてくる。内容はこの映像を見てもらうこととして、スピーチの仕方としては、いいスピーチはいつもそうだが、パワーポイントはあくまでも添え物で、数字を効果的に使っている。ちなみに、日本のセミナーは演者一人一人の時間が長すぎるといつも思う。

最後の締めくくりも力強い。なぜこの話がインドから遠く離れたアメリカの聴衆に関係あるのかをNilekani氏は述べる。まず第1に10億人を超える国だということ。世界の人口の6分の1をインドが占める。そして、それが民主主義の国の話であるということ。最後に、先進国の何倍もの速さで、その国の近代化が起こるといこと。環境、エネルギーなどいろんな面での課題の解決に世界が協力してあたらなくてはならない。

Nilekani氏のスピーチは言葉だけではない。彼はInfosysの会長の座をなげうって、インド政府でIT化のプロジェクトのリーダーに就いて勢力的に活動している。BCGがパートナーとしてサポートしている国連WFPも、このプロジェクトに参加している。Nilekani氏は、私より一回り歳が上だが、いつか直接お会いしてみたいと思っている。

What they teach you at Harvard Business School

Pod Castで愛聴している番組のひとつに、BBCの"Peter Day's Business Worldがある。その中で、タイムリーなトピックで話題になっている本、What they teach you at Harvard Business Schoolの著者へのインタビューが面白かった。

実はこの本は未読なのだが、インタビューを聞いてると、アメリカのパワーリーダー、ゴールドマンサックス、GE、大統領、世界銀行の頭取などを輩出しているHBSの意義について問いかける本らしい。

この本はアメリカでは上の題ではなく、"Ahead of the curve"というタイトルで販売されている。HBSはクラス内での過酷な競争で知られているが、最初の方の授業で「君たちはもしかすると試験でビリになるかもしれないが、それでも世の中から見るとベルカーブ(正規分布)の右端にいるエリートなんだ」と言われるらしい。Ahead of the curveの所以だ。

しかし、著者のPhilipはこう言う。"Comparison is the death of hapiness (人と比べた途端に幸せを感じなくなる)"。エリートとしての競争って何の意味があるの、という訳だ。資本主義に対して疑問が呈されている中、これは意義深い問題提起だと思う。

そういった中、私なりの著者の主張の理解はこうだ。HBSは実務家を育成するには「数字」に偏りすぎている。数字が真実を欺くのは、今回の金融危機、少し古くはエンロンなどを見れば明らかだろう。また、世界を変えるリーダーを育てるには、「競争」に毒されすぎている。本来は自分の中に「Principle(原則)」をもつべきだ。

ふと、最近お会いした叩き上げの在阪企業の社長とのやりとりを思い出した。世界的な経済危機の中どのような経営をしていくのか、というような話だったのだが、「私はあんまり数字を信用していませんねん。しかし、何度も景気があがったりさがったりするのを経験して、世の中がこう動いているという考えはもってます」と、独自の見方をお話いただいた。

興味深かったのは、ある新事業についての構想をお話しされていたときのこと、ある大手企業の成功した商品ことをとりあげて、「何か腹がたちますやろ」とおっしゃった。もちろん、半分は照れ隠しで、ここにもその社長なりの生活者に対しての思いがあるのだが、こんな反骨精神から面白い商品や事業は生まれるのだな、と思った。

私がお手伝いしているISLの経営者ゼミは、今年は多様な顔ぶれで、いろんな視点から議論が深まっている。来週で最終セッションを迎えるが、独自の世界観やプリンシプルと出会えるといいな、と思っている。

Be aware of a next explosion of the Internet


BBCをpod castで聞いていて、久しぶりにびっくりするニュースに出くわした。「インターネットの父」と言われるVint Cerf氏へのインタビューだ。最初は落ち着いた調子で質問していたBBCのキャスターが、Cerf氏の話が進むにつれ、思わず噛みながら「Let..Let me get this right....(ちょっ、ちょっと確認してもいいでしょうか・・・)と何度も問い直していたのには笑ってしまった。

Cerf氏は70年代にインターネットプロトコルであるTCP/IPを開発したコンピュータ学者だが、現在はChief Internet EvangelstというタイトルでGoogleに身をおいている。

氏によると、現在のインターネットユーザーは17億人。加えて、モバイルユーザーの20%、約7億人にネットアクセスがあるとして、最大24億人、重複を考えると約20億人がつながっているという。

衝撃の未来像は、今後3年から4年の間に、ネットアクセスは世界人口の75%、約50億人に達するというもの。そしてそれは携帯電話によってなされるという。

Cerf氏曰く、そこ(75%の普及率)までは比較的自信があるが、そこから先は分からないね。TVなどの技術を見ていても、最後の20%は大変だろう、とサラリとおっしゃっている。

数年の間に30億人のネットユーザーが出現する・・・これは劇的な変化だ。しかし、ホンマかいな?という向きもあるだろう。ただ、先日もインドに行って感じたが、農村でも携帯ネットが生活の中ですでに浸透しつつある、以前も書いたがインテルがアフリカもターゲットに、安価な無線LANベースのテクノロジーの開発に邁進している・・・

インテルのスケールとスピード
http://blog.goo.ne.jp/kozatori7/e/688a1fc17dd6c9cf8c23afdcc04f3928

・・・ひょっとしたら、あるかもしれん。

更に興味深いのは、Cerf氏が単なる技術的な可能性から上のビジョンを言っているのではないということだ。インターネットの爆発的な普及によって、例えば、電力監視システム(これもGoogleの新規事業の一つやね)のようにエネルギー問題、特に新興国でのそれを解決する、という社会的なインパクトを見据えている。

さて翻って、日本企業だ。問われるのは、関連企業のリーダーの先見性だろう。いま、Affodable Technology(手ごろな技術)というのが海外ではホットなキーワードになっているが、これまで進んだ技術を目指してきた開発部隊の方向を変えるのは、トップダウンしかない。GEは医療、電力など幅広い分野でこれをやってのけている。日本企業にはできるだろうか・・・

もう「日本はガラパゴスだし・・・」「そんなローコストの商品をやったって利益はでるのか」なんて言ってみても仕方がないところに事態はきつつあるようだ。世界経済が嵐の中で激動する一方、来るべき新しい秩序への動きがはじまっている。

ウィーンでラーメン


1ヵ月ぶりのブログが「ラーメンかよっ」である。ここのところ何となく鬱々としていて珍しく妻に「最近あまり寝れなくて・・・」なんぞ言ってみたら「あら、グースカ寝てるわよ」と返り討ちに合う・・・言わなければよかった。若い頃のように、ある一瞬は世界でも無敵だと思ったら次の瞬間にどん底に落ちるようなそんな激しいものではなく、ただただどんよりとしている。中年期というのもそれなりにやっかいだ。

その間クライアントとの会食で元気をいただいた。ありがたくて深夜家に帰ると涙がでそうになる。寝ながら中年の癒しの歌姫と最近諸兄姉に評判の阿部芙蓉美の曲をぢっと聴く。いい声だ。歌詞もいい。

http://www.abefuyumi.com/home/

BCGのパートナーミーティングで豚インフル騒動の中ウィーンに来ている。地図を片手にさっそく街を歩く。この都市には初めてくる。さすが欧州貴族の極北ハブスブルク家が治めていただけあって重厚な街だ。まだ膝が本調子ではないのだけれど小一時間ほどテクテク歩いて食林閣という中華料理屋さんに着く。ウィーンにはラーメン専門のほのぼの亭という店があるのだがあいにく日曜は休みだった。

注文したのはNoodels in soup with chikenとビール。出てきたのは写真の如く揚げたチキンが乗せられた一品。少し重いかなと思ったがスープがあっさりしていてなかなか美味だ。ビールがよく合う。店の奥で日本人駐在の家族が複数宴会をしている。隣では地元の女性が堅焼きソバをおいしそうに食べている。

すっかりいい心持ちになってまたテクテクと帰途につく。この街はけっこう自転車で移動している人が多い。主要な道路にはだいたい自転車専用のレーンがある。街路樹が立派でその中を走るのは気持ちがよさそうだ。レンタサイクルでもしてみようかしらんなぞと思う。


部屋に戻ってミニバーからRed Bull(リポビタンDみたいなやつですな)をグビっと飲む。少し元気がでてきた(気がする)。

念願のnanoに乗った


何だかよく分からない「つけ麺」を腹に納めて、予めホテルで調べてもらっていたnanoのショールームに向う。インドではSMS(ショートメール)が発達している。滞在中、運転手付きのレンタカーを雇っていたのだが、予約状況や車の場所などがいちいち私の携帯にメールされる。また、ホテルでnanoについて聞くと、フロントの男性がTATA(nanoを作っている自動車メーカー)に電話した。するとすぐにSMSが飛んできて、男性はタッチペンですばやく目指す情報を探し出すと、PCのキーボードを叩いて地図で場所を出してくれた。ケータイとPCがうまく融合された使い方だ。

目指すnanoのショールームは、クロスチャーチという大きな鉄道の駅の近くにあるはずだが、なかなか見つからない。膝はだんだん痛くなってくるし、したたり落ちる汗が目に入って痛い。うろうろしていると、まさかというところにnanoはあった。

見つからないはずだ。TATAの金融サービスの小さな店の一角に陳列されている。さっそく中に入ると、店員が寄ってきてあれこれ説明してくれる。中に入って運転席に座ってみる。私は車を全く運転しないのだが、思ったより天井が高く、足のスペースもゆったりしてる。エアコンも標準装備とのこと。後部座席にも座ってみた。大人3名が何とか座れそうなスペースだ。

外にでると、前のボンネットを開けてくれた。そこにガソリンタンクがあり、給油は前で行う。インドらしくスペアのタイヤも納められている。二気筒のエンジンは後部にある。私は車づくりには素人だが、それでもこれだけの車を30万円で売り出すのは革新的だと、実物をみてつくづく思った。

もうひとつ面白いのは販売方法だ。ここもそうだが、nanoの陳列スペースは驚くほど小さい。写真のように、ノベルティやアクセサリーをコンパクトに陳列する棚があって、可動式になっている。BCGのムンバイ事務所のパートナーに聞いた話では、ショッピングセンターのエスカレーターの脇なんかにも、ゲリラ的にディスプレイするらしい。売り方も新しい。



店を後に歩きだしながら、昨日、インドのあるハイテク企業の幹部がいった言葉を思い出していた。「日本企業は資本も技術もあるけれど、新興国ではまだまだだよね。富裕層向けの高いものしか作らないだろう。でも、この(中間層の)大きな市場は、見逃すには惜しいと思わないか。」

まったく同感だ。しかしそれにはイノベーションと熱い思いが必要だ。

ムンバイでもラーメン?

現地のハイテク企業の経営幹部とのミーティングがあり、インドの商都ムンバイまでやってきた。私にとっても刺激が多く、そのことはまたどこかで書きたいが、金曜に仕事を終え、ハイテク都市のバンガロールへ移動する中日、むらむらと「ムンバイでもラーメンが食べたい」と探し出したのが、どうやら市内に複数店舗を構える「Noodle Bar」という店。そして出会ったのが、この写真にある漆黒の「何か」である。

場所は、ホテルのあるNariman Pointから歩いて20分ほど、ムンバイ大学と昨年12月にテロに襲われたタージマハルホテルの中間くらいにある。実はひざを痛めており、サポーターをつけているのだが、知らない都市はテクテク歩いて実感をつかむことにしており、「こんな暑いんだから車を呼んだほうがいいよ」というドアマンの声を背後に、歩き出した。


しかし暑いし、結構埃っぽい。眼鏡がみるみる膜をはったように曇っていく。車も歩行者も誰も信号機を見ておらず、私もそれに倣って歩くのだが、ひざが痛くて何度か冷や汗をかく思いをする。

そしてようやくNoodle Barに辿り着く。店につくなりペプシを頼んで一気に飲む。うまい。そしてメニューをじっくり検分した。うーん?どうやら焼きそばしかないようだ。困ったなあと思って、店員を呼んで聞いてみると、違うページを指差した。みると「Broth」とある。「汁」ということですな。麺が入っているというので、それと春巻き、餃子を頼んでしばし待つ。

で、でてきたのがこの漆黒の物体。焼きそばを頼めばよかったかなあ、と思っていると・・・



麺がきた。どうやらつけ麺のようにいただくらしい。つけ麺よりラーメン派なんだけれど、とぶつぶつ思いながら口にほうばる。

うーん。曰くいい難い味だが、固焼きそばの餡かけのようなスープだと思ってもらえるといい。そしてお約束のようにちょっとスパイシーである。

まあカレーも結構食べたし、ラーメン喰いといしては後悔はない、といったところだろうか。海老餃子は結構美味だった。輸入モノかもしれないけどね。

こんど来たときには焼きそばに挑戦してみたい。

社会起業家の卵達と ラウンド2

3週間の間をおいて、社会起業家を目指す40名弱のアソシエイトとISLで2回目のセッションをやった。前回は四国のソーシャルネットワークドコイコ」について、慶応ビジネススクールのケースを使ったが、今回はアソシエイトの一人で、クリック募金ベンチャーを立ち上げた関根さんが、自らのビジネスプランを教材として提供してくれた。最近は気鋭の社会起業家として雑誌などで取り上げられることも増えてきた御仁だが、最初に会った印象は「ぼーっと」した人(失礼!)。しかし、いろいろ話してみると実に熱いし、いろいろ深く考えている。

前回のセッションは正直「ぬるかった」。さて、今回はどうか・・・

関根さんの事業ブランを元にした事前課題には、ほとんどの人が真剣に取り組んでくれた。もちろん出来にはバラツキがあるけれど、読んでいて鋭いなと思えるものも結構あった。

セッションでは、value propositionについての議論にかなりの時間を使った。ソーシャルビジネスについては、それが「イイコト」なのだから当然価値があって、人々はそれを支持するという「安易な」解析になりがちだ。

value propositionは、「誰に」「どのような価値を」「どのような対価で」提供するかが骨子となる。すっぽり抜けがちなのが最初のところで、クリック募金で言えば、
 「企業はなぜ他の広告媒体よりクリック募金を選ぶのか」
 「どのような企業により訴求できるのか」
 「消費者はなぜイーココロ!でショッピングをするのか」
 「どのような消費者により訴求できるのか」
をクールに考え抜くことで、イーココロ!の可能性と課題が見えてくる。

私自身は、この事業はいま大きな岐路に立っていると見ている。今度、関根氏と議論してみたい。

セッションが終わったのは11時近くだったが、そのあと日付が変わる時間まで何名かのアソシエイトと「雑談」をした。うち一人はビジネスプランを練っていると私の幻が出てきて「そんなんでどないしてお金とるの?」とかビシビシ言うらしい・・・(苦笑)。しかし、それが少し「クールな目」でプランを見つめることになるのなら、いいのではないかな?

日本の社会起業家達には、正直に言えば、スケールがない。関根さんもスケールについて悩んでいるし、他の人たちはもっと手前のミッションのところでもがいている。それが、田坂広志さんの言う「草の根」的なムーブメントとして広がっていき、個々のスケールは問題にならないのか、それとも彼ら彼女らの中から本当に社会を変えるスケールを持つ人がでてくるのか、つらつら考えながら家路についた。

↓関根さんのサイトです。
募金サイト イーココロ!